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言語処理のネットワーク解析

今日取り上げる論文は、言語処理をネットワーク的に解析したものです。

結論から述べると、言葉の読み書きができれば、ことばの聞き取り能力も高くなるということなのですが、これを識字者と文盲者を対象に実験を行い、ネットワーク解析を行ったのが今日の論文です。

脳というのはいろんな場所がつながって、情報を伝達していて、一つのネットワークとして機能しています。

この論文によると、ひとえに言語機能といっても、さまざまなループから構成されているようです。

上図参考URL:

この図でいけば、

音韻ループはブローカ野(B)、ウェルニッケ野(W)、後部島皮質(pI)、前部帯状皮質(ACC)、下頭頂小葉(iPC)、

注意ネットワークは前部帯状皮質を中心にして、聴覚野、前頭前野、下頭頂小葉、ブローカ野、ウェルニッケ野、後部島皮質

などなど、同じ領域がいろんなループの中で様々な機能を示しながら相互作用していることがわかります。

言語処理というのはこの論文で提示されたモデルのように色々なルートの組み合わせでなされているのですが、読み書きができるものは、言語処理に関わるネットワークのうち、注意機能ネットワークが十分に働いており、このことで聞き取り能力が高くなるということが述べられています。

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【要旨】

「先行研究によって識字能力が音声言語機能に少なからぬ影響を与えることが指摘されてきている。読み書きを学習することで非語彙的なものに対する音韻処理・構造知覚機能が高まると考えられている。本研究では識字者と文盲者を対象に実験を行い、識字能力が音韻処理に与える影響について検討した。実験では意味のある単語と無意味単語の復唱課題を行わせ、その時の脳活動のネットワーク解析を行った。結果、識字者では有意味単語も無意味単語も脳内の処理過程はほぼ同様であったが、非識字者では異なる処理過程を示した。特に音韻ループで違いが顕著であった。この結果は以前我々が研究した結果と同様の結果を示し、児童期の識字学習が成人の機能的な脳機能に影響をおよぼすことが考えられた。特に音声言語機能ネットワークが識字機能によって調整されることが考えられた。」

参考URL:Language processing modulated by literacy: a network analysis of verbal repetition in literate and illiterate subjects.

コメント

昔、居酒屋さんで働いていた頃、「おい、お前、耳ついてんのか」と店長によくぶん殴られましたが、あれは耳の問題ではなく、注意機能の問題だったのですね(-_-;)

それはさておき、脳を局在的な機能の集合と見るよりは、この論文で示したように、回路の集合と捉えたほうがわかりやすいような気がします。

塩がいつも塩辛いというわけではなく、例えばスイカにふりかければ、スイカの甘みを増す作用があるというふうに、ある特定の領域が特定の機能を果たすと言うよりは、組み込まれたネットワークの中でどういうポジションにいるかによって、働き方が現れる、変わってくると考えたほうがいいような気がします。

ミラーニューロンシステムというのは「ある動作を見ている時も、実際にしている時もひとしくコードするようなシステム」ということを聞きますが

やはりそうではなくて、見ることに関わるループは、見るループとしてあり

動くことに関わるループは動くループとしてあり

そのループとループの連結点、8の字の結び目のところに存在するのが、いわゆるミラーシステムを構成する腹側運動前野なり、頭頂間溝なり、いろいろだとおもうのですが

そういったミラー領域によって連結された、いろんな機能のループの集合がミラーシステムなのかなと考えたりしました。

いろんなループは他のループとどっかで繋がるはずで、

そうすると、どっからどこまでがミラーシステムというのは、結構恣意的になるのかなとも思います。

そう考えると、ことばというのは、ものごとを定義することだと思うのですが、

ものごとを定義するというのは、このミラーシステムの話しのように結構恣意的で

ことばで何かを説明するというのは不明瞭なもので不明瞭なことを述べているようで

ことばというものはなんだかもどかしいなと思ったりもしました。

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