中心的な記憶と背景的な記憶?
ヒトは日々起きてから寝るまで、また生まれてから死ぬその日までいろんなことを記憶しては思い出し続けますが、この記憶というのはいったいどういうものなのでしょうか。
記憶がどんなものかというのはいろんな切り出し方があると思うのですが、一つは中心記憶と背景記憶に分けるというものでしょう。
例えば人の顔を思い出す時というのはその人の顔だけでなく、その背景にあるような画像、山で会ったのか街で会ったのかというような背景的な情報がついてきますし、美味しいものを食べたという記憶であれば、その食べ物だけでなくどんなお店で食べたのか、誰と一緒に食べたのか、その時の天気はどんなふうだったのかというような背景的な記憶もついてきます。
つまり記憶というのは中心的な情報と背景的な情報から構成されていると思うのですが、今日取り上げる論文はこの中心的な記憶と背景的な記憶の違いについて脳波測定を行い調べたものです。
結論を述べると脳波で見る限り中心的な記憶と背景的な記憶のそれぞれにかかわるような脳活動パターンを切り分けることができないこと、またどちらかというと中心的な記憶が主で、これがうまく記憶できているような場合は背景的な記憶も覚えていられやすいのではないかということが述べられています。
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ポイント
鮮明に記憶されているようなエピソード記憶は、中心になるエピソードや物品とその背景となるような記憶から構成されている。
今回の研究ではこの中心になるような記憶と背景になるような記憶の違いを事象関連電位を用いた方法で調査を行った。
実験では中国語の漢字を記憶する課題で丸型の枠の中に漢字がある場合と四角形の枠の中に漢字がある場合を見せ、記憶/再生させる課題を行った。
結果、うまく記憶を再生できたような場合の事象関連電位は認められたが中心的な記憶と背景的な記憶の明確な差は見出されず、記憶においては中心的な対象の処理が重要であることが考えられた。
参考URL:
Distinguishing source memory and item memory: brain potentials at encoding and retrieval.
補足コメント
紅茶に含んだマドレーヌを食べて長大な小説のもととなる記憶が一気に再生されたというようなフランスの小説家の話でもないのですが
中心的な記憶がしっかりしていれば背景的な記憶も自然とついてくるということなのかなと思いました。