「ハンドサインの認識を行っている時の異なる神経システムの協調」
洋の東西を問わず踊りというのは指先が大事、指に気持ちを込めなさいというようなことが言われるそうですが、これはいったいどういうわけでしょうか。
何もダンサーでなくても日常的にわたしたちは指先でいろんなことを表現します。
それはおいでおいでというハンドサインから親指を立ててしめす「いいね!」サインだったりいろいろなのですが、こういったハンドサインを見ている時私達の脳はどんなふうに活動しているのでしょうか。
今日取り上げる論文はこのハンドサインを認識している時の脳活動について調べたものです。
結論を述べるとハンドサインを認識している時の脳はあたかもヒトの表情を理解しているときと同じような活動を行うようです。指先にこころがこもるというのもまんざらウソではないのかなと思いました。
ポイント
今回脳磁図を用いてこのハンドサインの認識を行っている時の脳活動について調査を行った。結果、一次視覚野、ミラーニューロンシステム、社会的認知と物品認知に関わるシステムが協調して活動することが示された。
特に下頭頂皮質、上側頭溝、下後頭側頭皮質が同時に活動しており、これら3領域の活動は上側頭溝で統合された腹側経路と背側経路の情報を反映しているものと考えられた。
これに加えてハンドサインの認識においては右脳優位であり、全体的にハンドサインの処理は表情認識処理と類似していることが考えられた。
参考URL :Cooperation of different neuronal systems during hand sign recognition.
|
補足コメント
その昔ウィーンで白鳥の湖を見る機会があって、その時踊り手が切なさそうに指先を震わせるシーンがあって
指先一つでなんだかすごい悲しさが伝わることがあって不思議な感じがしたことがあるけれど、これは指先に踊り手の「表情」が現れていたからかなと思いました。
さて今日の論文の少し詳しい話を書くと
文字にしろ表情にしろ認識というのは二段階の処理を経ると考えることができるそうです。
言葉であればまず目に入った言葉を脳内辞書で検索をかけてとりあえず言葉を同定する。辞書で索引を引いてとりあえず見出し語のところに行き着く感じではないかと思います。これが第一段階で
もうひとつは情報そのものの意味をダイレクトに取るような感じのもので
表情を読むときもカタチと意味の理解、両方がパラレルに処理されて脳のある部分でまとめられるのですが、こういった感じがハンドサインもよく似ているそうです。
本居宣長の言葉に「姿は似せがたく、意は似せやすし」というのもありますが、表情、言語、ハンドサインの認識に関わる「姿」と「意」の脳活動を合わせて考えると興味深いなあと思いました。