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なぜ同窓会であいつは変わらないのか?デフォルトモードネットワークと自己の関係

年末年始の頃になると同窓会が多くなると思うのですが、そこでかわされるお決まりのセリフが「おまえ、全然変わっていないな」というものではないかと思います。

いや、そんなことはない、学生時代はひょろひょろのいい加減なやつだったとしても、社会に出ていろいろ磨かれて、職場では偉そうに指示の一つを出したり、家ではいっちょまえに父親然として構えているかもしれない。

でも不思議なことに同窓会という“場”に交わると、自分の心持ちというものも学生時代のひょろひょろいい加減な感じに変わってしまい、結果として「全然、変わっていないな」ということになるのではないかと思います。

つまり「わたし」という意識は場によって移ろいやすいものではないかと思うのですが、これは神経科学的にどういった解釈が可能なのでしょうか。

今日取り上げる論文は「わたし」という感覚について調べられた87本の研究のデータを総解析したものです。

脳には何もしていない時もグツグツと活発に活動している領域があり、これはデフォルトモードネットワークと呼ばれています。場所は右脳と左脳がくっついているあたりの外側からは見えない内側の領域ですが、この領域の活動はボーっとしている時のあてのないぐるぐる思考(あれどうだったかな、今日の晩御飯何にしようかな、明日何しようかな)に関わり、かつ「わたしはわたし」という感覚にも関係していると言われています。

つまり脳の内側領域は全般に「わたし」感覚に関わることが知られているのですが、この論文では、これをさらに詳しくふるいにかけて、脳の内側領域の中でも前帯状回の先っちょの方、添付の図を見て頂ければと思うのですが前帯状回脳梁膝周囲部というところがとりわけ大事なことが示されています。

またこの「わたし」という感覚ですが、ベースになるのは脳の内側面を中心にしたデフォルトモードネットワークで、これが外部情報と相互作用を起こすなかで、その場その場の「わたし」感覚が惹起してくるのではないかということが述べられています。

 

【要約】
わたしという意識がどのようなものであるかについては神経科学領域で注目を集めている問題である。脳の内側面領域が自己意識および安静時の状態に関与しているかについてはいくつかの神経画像研究で議論されている。今回延べ1433人を対象にした87の研究をメタ解析を行い、自己認知(自分の顔の視覚判別、自分の名前の聴覚判別)、親しい他者認知(個人的によく知った人物情報の認知)、他の認知(個人的に関係のない他人もしくは物品の認知)、安静時状態の4条件に関わる神経活動を比較した。結果、前帯状回脳梁膝周囲部が自己認知と関係して高い活動を示しており、この領域はデフォルトモードネットワークと重複するものであった。また内側前頭前野と後帯状皮質の活動については自己と親しい他者で異なる結果が示された。さらに自己という感覚は安静時のデフォルトモードネットワークと外部刺激が相互作用を起こす中で惹起されるものであることが考えられた。

参考URL:How is our self related to midline regions and the default-mode network?

コメント

それでいけば内側の「わたし」が外側に反応して惹起するのが「わたし―a」「わたしーb」「わたしーc」とかいうものなんだろうか。

つまり「わたし」というのは内側が外側と交わることから惹起する反応的なものなんだろうか。

むずかしいです(-_-)

 

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