
言葉はミラーニューロンシステムから生まれてきたのか?
今日取り上げる論文は、ヒトの言語というものがいかにミラーニューロンシステムから生じてきたかについて仮説的に検討したものです。
ブローカ野で見られるミラーニューロンシステムというのは、上肢−手指、口腔−表情、口腔−咽頭の観察/実行をリンクさせるようなシステムだそうですが、
まず口腔−表情のミラーシステムで二つの個体が意思の伝達が出来るようになり(二項関係)、
それに上肢−手指のミラーシステムが乗っかってきて、指差しできたりすることで、他者や他の対象物を含む三項関係が可能となり、
そこからさらに上肢手指のジェスチャーが口腔−咽頭の発生と絡んで、音声による表象が生まれたのではないかということです。
これは具体的には手を広げて大きい、あるいは手を狭めて小さいを表現するのに、口腔の動きも同様の動きでついてきて、大きい時には口を大きく(Ohkii)、小さい時には口も小さく(chIisai)開くことで原初的な音声表象が発達したのではないかということが述べられています。
要旨
「サルにおいては、腹側運動前野(F5領域)刎側部に、対象物を操作している時や握り込んだりしている時、あるいはどう酔うん動作を他の個体が行っているのを見ている時の両方に反応して活動する神経細胞が存在する。これらの神経細胞(ミラーニューロン)は、見ている動作から自分の中で似ているような動作を生み出すことで、自己と他者を結ぶようなシステムだと考えることが出来る。TMS(経頭蓋磁気刺激)やPETを使用した研究からは、ジェスチャーの理解に関わるヒトのミラーシステムはブローカ野を含むことが考えられる。このような観察/実行を合致させるようなシステムは「すること」を「つたえあうこと」に変える力を持ち、また動作の実行者と観察者を、メッセージの送り手と受け手にするような力を持っていると考える。」