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「他者の心を理解する:発達心理学と機能的神経画像研究の結合」

男と女の騙し合いという言葉もありますが、この騙し合いに必要な能力というのはどういうものでしょうか。

今日取り上げる論文は相手の心を理解している時の脳活動について調べたものですが、相手の心を理解するのは2つのシステムが絡んでいることが説明されています。

ひとつは「2歳児システム」というようなものでこれは生後2年位でできるようになるような心の理解です。お父さんがプリプリ怒ってドスンドスン歩いてきたら2歳児でも「怒っているな」と察するしお母さんがおもむろに台所にたったら「これからご飯の準備をするんだな」ということは理解できる。

日本語には「見て取る」という言葉がありますが相手の所作から相手の意図を直接読み取るような心の理解、こういった心の理解はだいたい2歳位でできるようになるそうです。

でもこの「見て取る」システムだけで世の中がうまく回るかというとそんなこともなく、人の心を読むためには「見えないところも見る、読む」という能力が必要になってきます。こういった能力は物心がついてウソがつけるようになる4歳位から形になってくるので「4歳児システム」というようなものと言えると思うのですが、男と女の騙し合いというところでいけば「この女、俺に気があるな、ヒヒヒ」というのもこういったタイプの「見えないところを見る、読む」という心の理解でしょうし、更にその上をいく「この男、自分に気があるなと信じているのね、ウフフ」というのもやはりこういったタイプの心の理解でしょう。

つまり相手の心を読み取るには2歳児システムのような「見て取る」能力と4歳児システムのような「見えないところも見る、読む」という能力が必要だと思うのですが脳の画像を見るとそれぞれこれらは別のところが働いており脳科学的に考えてもやはり別のシステムで駆動しているのではないかということが述べられています。

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ポイント

・他者の心を理解する機能は少なくとも2つの異なる機能に分けられる。

・ひとつは発達初期に見られる心の理解で、これは相手が何をしようとしているか、どのように感じているか、どんな気分でいるかを想像するような能力である。

・もうひとつは発達後期に見られるような心の理解でこれは相手がどう考えているか、何を信じているかを推し量るような能力である。

参考URL :Understanding other minds: linking developmental psychology and functional neuroimaging.

コメント

2歳児システムというのは具体的にはミラーニューロンシステムという模倣(視覚→運動変換システム)に関わるシステムとかぶるところが大きく、この論文では後部上側頭回とブローカ野が「見て取る」システムに関わっているのではないかということが述べられています。

上図URL:

なお4歳児システムというのはおそらくデフォルトモードネットワークと呼ばれるシミュレーション的な思考に関わるようなシステムと同様のものと思われ、この論文では内側前頭前野と側頭頭頂接合部が「見えないところも見る、読む」に関わっているのではないかと述べられています。このデフォルトモードネットワークというのは大体このへんです。

デフォルトモードネットワーク動画

なおこの論文は少し古く最近の研究だとこの2つのシステムはリンクしてお互いに情報をやりとりしているとも言われており

ミラーニューロンシステム⇔デフォルトモードネットワーク

まだまだよくわかっていないところの多いテーマだと思います。

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