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前帯状皮質と不安感の関係とは?

恐怖や不安というものは毒にも薬にもなるのではないかと思います。

もし不安感が全く無ければ盛んに危険な状況に身を晒すことになり、怪我や死亡のリスクが高まるでしょう。

また逆に恐怖や不安への感受性が高すぎれば、日々不安に襲われて、何気ない日常生活もお化け屋敷並みにしんどいものになるでしょう。

不安はありすぎても良くないし、なさすぎても良くない。

ヒトが生物として生きていく以上、不安とはうまくやって行かなければならないのなと思います。

不安とうまくやっていくとはいいますが、これは神経生理学的に見るとどういう状態なのでしょうか?

今日取り上げる論文は不安感とその制御について調べたものですが、不安感が上手に制御できている状態というのは、前帯状皮質の前部がうまく働いている状態なのではないかということが述べられています。

扁桃体というのは不安や恐怖といった情動と関連して活動するのですが、不安障害の患者さんというのはやはりこの領域の活動が高く正確な認知判断ができなくなる傾向があるようです。

それに対し、健常者は前帯状皮質の前部の領域がうまく働いて、この扁桃体の過剰な活動を抑え、正確な認知判断ができている傾向があるそうです。

こういったことから不安感を考える場合、扁桃体だけではなく、前帯状皮質の働きも考えなければいけないのではないかということが述べられています。



【要旨】「対象:臨床的な知見によれば全般的不安障害は情動処理システムの障害によって引き起こされるとされるが、その神経生理学的レベルでの機序は明らかにされていない。前回の研究では健常者を対象にした研究から前帯状皮質の前部が扁桃体の反応を調整することを示したが、この調整機序は非情動的な矛盾課題と較べた場合、情動的な矛盾課題に対して特異的であった。今回同様の実験を全般性不安障害患者に対して行い、この事実を検証した。
方法:17名の全般性不安障害患者と24名の健常者を対象に実験を行った。実験では文字と画像で矛盾を生じうる表情判別課題を行い、試行中の脳活動を機能的MRIを使用して計測を行った。
結果:健常者は矛盾課題に対して効果的に反応を制御できたが、全般性不安障害患者は制御できなかった。機能的MRIの結果からは全般性不安障害患者は前帯状皮質前部における扁桃体の抑制が十分に機能していないことが示された。また課題遂行能力と脳活動の間の関係は相関が見られた。
結論:これらの結果から全般性不安障害患者は無意識的で暗黙的な情動処理が十分になされていないことが示された。不安障害を非意識的な情動処理の異常と捉えることは、前帯状皮質への介入も含め、新たな治療の道筋を開くものと考えられる。」

参考URL:Failure of anterior cingulate activation and connectivity with the amygdala during implicit regulation of emotional processing in generalized anxiety disorder.

コメント

うそか本当か分かりませんが不安遺伝子というものがあるそうです。

セロトニンの分泌に関わっている遺伝子で、日本人はこの不安遺伝子が欧米に比べて50%高く、このことが日本人の内向的で権力服従型の性格につながっているのではという話しですが
欧米で生活した経験のある帰国子女や日系二世、三世が必ずしも内向的でもなく

わずか数年でも外国で揉まれると自己主張することに躊躇を感じることがなくなることもあると思いますが

遺伝子が全部を決めるというのもないんじゃないかなと思います。

人間のキャタクターを料理の味付けに例えるなら、遺伝的資質が素材の持ち味で、環境が味付けなのかなと思います。味付け(環境)次第で遺伝子が発現したり発現しなかったりもきっとあるのかなと。

そう考えると画一的な教育方針というのは、なんでもかんでも塩をかけときゃ間違いないんだというような料理とにて、無理があるのかなと思います。きっと変な遺伝子がonになって心のガンになる人も出てくるでしょう。

自分に対しても他人に対しても、謙虚な料理人のように振舞いたいものです。

 

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