意図理解とミラーニューロン
よく気の利く人というのがいます。例えばタバコを吸おうと胸元に手を持って行くとすっとライターが出てきたり、宴席でキョロキョロしていると、すっと「どうぞ」とビール瓶が出てきたり、そんなことを上手に出来る人というのがいるのですが、こんなふうに相手の動作の先読むこと、言い換えれば観察による他者の意図理解というのがどういう仕組みでなされているのかについて考察したのが今日の論文です。
自分が何かの動作を行っているときにも、他人がその動作を行っているのを見た時も等しくコードするようなそんなシステムをミラーニューロンシステムというらしいのですが、このミラーニューロンシステムを構成する下頭頂小葉(角回、縁上回に相当)をサルを対象に調べたのが今日の論文です。
この下頭頂小葉にあるミラーニューロンは他者が何かを握るのを見るときも、自分が何かを握るときも、等しく活動するのですが、まったく一緒というわけでもないようです。おなじ「握る」ニューロンでも、次に来る動作が「食べる」場合と「置く」場合では、別々にコードしていることが示されています。
これを模式的に示すと(握る)ニューロンが3つ並んでいていて、どんな時も、この3つが握るときに下図のように
(握る)◯ (握る)◯ (握る)◯
のように「握る」関連ニューロンがすべて活動するわけではないことが示されています。
上図とは異なり、握って→食べる場合には、(握る)ニューロンが全部活動するわけでもなく、
「握る」ニューロンの中でも「食べる」と関連性の強いニューロンがより強く活動し
(握る:食べる)◯ (握る:置く)△ (握る:投げる)☓
握って→置く場合には同様に
(握る:食べる)☓ (握る:置く)◯ (握る:投げる)△
という風に、次に来る動作が置く用の(握る:置く)ニューロンが活動最も強く活動することが実験で示されています。
大リーグの試合を見ていると、外野に飛んできたボールを飛んで、取って、投げるという一連の動作が極めてスムーズにされているのを見ることがありますが、
このスムーズな動きを可能とする背景として、上記のシステムがあるのではないかということや、他人の行為を先読みできるのも、このシステムがあるからではないかということが述べられています。
「握る」という行為は、ヒトの基本的なものではありますが、その幅というのはずいぶん広いなあと思ったり、
上肢の機能訓練にこのような概念を取り入れることはできないのかなと思いました。
参考URL:Parietal lobe: from action organization to intention understanding.