無意識的な視覚処理と注意の関係
「眼中にない」とか「目にもくれない」という言葉があります。
確かに何かに一生懸命になっている時というのは、余計な刺激が目に入ってこないということはあるのではないかと思います。
人が知覚出来る容量には限界があるようです。
例えば電話番号の数字なども7桁くらいまでだったらどうにか覚えられるけど、それ以上になるとおぼつかなくなってくる。
あるいはすべてが見えているようでも、視覚が認識できる範囲はごくごく限られていて、実際のところ気を向けているパソコンの画面や本の文字以外のところというのはきちんと知覚されていない。
こういったこともヒトの知覚容量というのが限られていることに由来しているそうです。
何かにいっぱいいっぱいになると周りが見えなくなるように、負荷量が多い状況では視覚処理機能も低下することが心理学の実験によって証明されているそうです。
ただこれが無意識的な視覚処理までが影響されているかについては決着がついていなかったそうです。
無意識的な視覚処理というのは意識はされていないけど、脳に入ってくる視覚情報のことです。
テレビのコマーシャルで数十コマに一コマ、扇動的な画面を入れておくと購買意欲が高まるのはサブリミナル刺激と言われますし
バスケットボールやサッカーではボールや人の動きを一つ一つ知覚しているわけではないと思います。知覚はされないけど、たしかに頭には入ってくる。
このように意識には上がってこないけれども、生体の反応に何らかの影響を与えうる刺激というは確かにあるようです。
今日取り上げる論文は、この意識に上らない視覚刺激の処理が、高い注意を要する状況下で影響を受けるかどうかについて調べたものです。
結果を述べると、視覚野の活動は、やはり無意識的な視覚処理であっても、高い注意が必要なときは活動が低下することが示されています。
【要旨】
「視覚野の活動が注意や意識といったものによってどの程度影響されるかということが長い間研究されてきた。一般的な学説では、意識的な知覚刺激だけが注意の負荷量によって影響を受けるとされてきた。またこの学説では無意識的な知覚刺激、つまり閾値以下の視覚刺激というものは注意の負荷量の影響を受けないとしている。本研究では視覚野における閾値以下の視覚刺激の処理が注意の負荷量の影響を受けるかについて様々な条件設定のもとで実験を行い、その神経活動を機能的MRIにて測定を行った。結果、注意の負荷量が多い時には、一次視覚野において閾値以下の視覚刺激の処理に関わる神経活動が低下することが認められた。」
参考URL:Attentional load modulates responses of human primary visual cortex to invisible stimuli.
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コメント
人の意識というのは常に何かに向いていて
それが目の前のパソコンだったり、冷蔵庫だったり、なにかしらの考え事だったりするのですが、人の意識というものは何も考えないということができない。常に気持ちが何かに向いている。
注意というのも、何か特定の対象に気が向いているわけで
そうすると「意識」と「注意」の違いって何なんだろうなどと思うのですが、
この論文によると「注意」は「無意識」情報の処理にも影響を与えるので「意識」=「注意」ではないということだそうです。
野球にしてもサッカーにしても、ああいうスポーツはきっと知覚されないような閾値以下の情報をどれだけ処理できるかがパフォーマンスに大きな影響を与えそうな気がするのですが
プライベートで頭がいっぱいになるような状況になれば、きっと試合で走り回っていても閾値以下の情報を処理する能力も落ちて、パフォーマンスも低下するのだろうかなどと考えました。
職場に行って、すくないワーキングメモリを上手に使うためにも、それなりに家のことにもきちんと気を使わなければいけないのかなと思います。