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「統合失調症患者の社会脳の機能異常は意図のタイプによって調整される:機能的MRIによる研究」

「疑心暗鬼」という言葉があります。

疲れてきたり心がすり減ってきたりすると神経が過敏になる。それゆえ時に被害妄想的になったり、相手の心を過剰に解釈して勝手にへこたれてしまう、そんなことが長い人生生きていれば一度や二度はあると思うのですが、こんなとき脳はどんなふうに活動しているのでしょうか。

今日取り上げる論文は被害妄想症状を持つ統合失調症患者の脳活動について調べたものです。

結論を述べると統合失調症患者は他者の心を読み取る能力が低くなっており、それを裏付けるように心の読み取りに関わる脳活動が健常者と異なることが示されています。

特筆すべきは、物理的現象を見ている時も何かしらの意図を感じるような脳活動を示すというところで、これは例えば風に吹き飛ばされてボールがコップにあたったというような場面を見せた時にも何かしらの意図を感じるような脳活動が見られたことが示されています。

こういったことから被害妄想症状を示す統合失調症患者というのは脳の中でも心の読み取りに関わる部分がうまくはたらておらず、過剰に意図を読み取ってしまうような状態にあるのではないかということが述べられています。

 

ポイント

・本研究では被害妄想を呈する統合失調症患者の心の理論について機能的MRIを使用して調査を行った。

・実験では異なるタイプの意図(個人的な意図、未来に関わる社会的意図、コミュニケーションを取ろうとする意図)と非意図的状況を示す画像を読み取っている時の脳活動の測定を行った。

・結果統合失調症患者では心の理論に関連する帯状皮質周囲皮質と両側の側頭頭頂接合部に活動の低下が認められ、実際の課題成績では社会的な意図の読み取りに関わる課題の低下がより顕著であり、さらに統合失調症患者は意図が関係しない因果関係の画像を見せた時も意図が関与する時と同様の反応を示した。

参考URL :Dysfunction of the social brain in schizophrenia is modulated by intention type: an fMRI study.

コメント

疑心暗鬼になっている、そこまでいかなくても一人相撲をとって勝手にへこたれているなんてときには

この心の読み取りシステムが過剰に働いているのかなと思いました。

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