下縦束:視覚処理における脳内高速道路とは?
交通システム同様、脳にも高速道路や新幹線に対応するものがあるそうです。
無論新幹線だけでは、東京から大阪の下町へ行くことが出来ない。
効率良く動くためには高速道路だけではだめで、四方に張り巡らされた下道も必要なのではないかと思います。
こんな理由もあって脳というのは高速道路と下道の二本立てになっているようです。
では高速道路はどういうものかというと、これは上縦束や下縦束といったもので前頭葉や頭頂葉、後頭葉などをダイレクトに結んでいるようなそんな連絡線維のようです。
新幹線で行ったら、東京と大阪、あるいは大阪と福岡を一直線につなぐような、そんな路線にあたるものでしょうか。
ただこの下縦束に関してはいろいろ議論があるようで、そもそも本当はこんなものなんかなく、実はローカル路線の集合にすぎないんではないかということも言われてきたそうです。
今日取り上げる論文はDTI(拡散テンソル画像)という技術で幹線道としての下縦束があるということを示したものです。
以前、視覚処理には空間処理に関わる背側経路(後頭葉→頭頂葉)と意味処理に関わる腹側経路(後頭葉→側頭葉)があるというお話をしましたが
この下縦束というのは腹側経路のメインストリートになるようなもののようです。
高速道路よろしく降り口もいろいろあるのですが、後頭葉と側頭葉をまっすぐにつなげていく。
そんな経路があることが示されています。
【要旨】
「テンソル拡散画像は白質線維の構成と方向性について描出できることが知られている。今回このテンソル拡散画像を用いて、後頭葉-側頭葉間連絡についてヒトを対象に調べた。伝統的に側頭葉全部と直接的に後頭葉を結ぶ線維束として下縦束の存在が考えられてきた。しかし近年、この下縦束は複数の間接的な連絡線維の集合であって、後頭葉と側頭葉を直接つなぐようなものではないのではないかという意見が出されている。今回テンソル拡散画像による研究ではやはり下縦束の存在を示す結果となった。またこの下縦束は視覚“連合”野から側頭葉前部の外側及び内側に連絡していることが示された。この下縦束の機能として後頭葉の視覚情報を迅速に側頭葉に伝達し、その情報を扁桃体に伝えて、迅速に側頭葉にフィードバックを促すことが考えられた。」
参考URL:Occipito-temporal connections in the human brain.
コメント
下道だけでもいいのに、なんで高速道路があるかというと
高速道路で先回りして側頭葉に情報を届けておくことで、学習が容易になるらしい。
高速道路で先回りして側頭葉に予習させておくことで、後続の下道経由の情報が届いた時に学習されやすい、記憶に留めやすいのではないかということが書かれていました。
一見無駄なようにできていて、よくできているなあと思いました。
無駄って、きっと大事なのですね(-_-;)
余裕を持って生きよう(T_T)
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