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怒りの声に脳はどのように反応しているのか?

泣いたり喚いたり、感情的な声というのは耳につきやすい。

台所で仕事をしていても、赤ちゃんの泣き声というのはすぐ耳に入ってくるし、

職場で仕事をしていても、どこかで誰かが怒鳴っていたら、すっと耳に飛び込んでくる。

赤ちゃんの泣き声にしても同僚の怒声にしても、大事なのは「感情的」というところではないかと思います。

これが同じ音量で普通の会話をしていたら、そんなには耳に入ってこないのではないかと思います。

今日取り上げる論文は、なぜこんなふうに感情的な声が耳につきやすいかについて調べたものです。

音声の処理というのは聴覚野でなされるのですが

この聴覚野というのは側頭葉の上の方、上側頭回というところにあるそうです。

実験で怒声を聴かせると、この右の上側頭回の中央部のあたりの活動が高まることが示されており、情動的な音声を聞いた時には、同部位の活動が高まることでより情動的な音声が認知されやすくなるのではないかということが述べられています。

参考URL:The voices of wrath: brain responses to angry prosody in meaningless speech.

【要旨】

「本研究は、機能的MRIを使用して、怒っている声を聞いている時には上側頭溝中央部の活動が高まることを示したものである。このような脳活動の変化は声を聞いた場合に限局されており、怒りの調子を合成的に作った音では同様の効果は得られなかった。またこのような変化は注意機能とも独立したものであった。これらのことから注意機能と情動情報処理機能は異なる処理がなされ、またこのような処理は声と表情の情報処理に共通して見られるシステムであることが考えられた。」




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コメント

おっかない顔や泣いている顔というのも、眼につきやすく、これは顔認識に関わる紡錘状回の活動が、情動的な表情が目に入った時高まるからだそうですが、仕組みとしては声の処理にしても顔の処理にしても似ているのではないかということが述べられています。

ところで昨日は私淑する先生が遠く長野まで来られて講演を聞きに行ったのですが、大変興味深いお話を聞くことが出来ました。ありがとうございました。

いろいろ考えることが多かったのですが、大きくは2点あり、ひとつはいわゆる心の所在について、もうひとつは倫理と社会、痛みについてなのですが

先生のスライドの中でブローカ野が、音声にしてもジェスチャーにしても文字にしても、意味理解に際して共通して働くというものがありましたが

あくまで私見ですが、ブローカ野というのは何かをするところと言うよりは、いろんな情報をまとめる、構造化するような場所だと思うのです。

車が一台商品開発されるとしたら、そのゼネラルマネージャー的なもので、設計からコスト、マーケティング、いろいろな情報がマネージャーのところに上がってきて、マネージャーはそれらの情報を一つの形にまとめあげてアウトプットする、そういったところがブローカ野なのではないかと思うので意味処理に際してブローカ野が働くのは必然なのではないかと思ったのと

あるいは倫理的な判断、共感的な理解には前頭前野のどこかが必要だ、という話もあるのですが、

前頭前野がいかれていて、なにも共感することができなくとも、損得のアルゴリズムで道徳的な「振る舞い」はできるし、アスペルガーのように場の空気を読む機能にかけていたとしても、一定のアルゴリズムで判断し、行動出来れば空気を読んでいるかのような「振る舞い」ができる。

人が人の心を理解するには「振る舞い」から理解するほかなく

じゃあこの振る舞いの後ろにあるものは何かといったら化学の構造式みたいなV1⇆V2⇆扁桃体みたいなネットワーク構造なのだけれども、

ヒトは振る舞いから心を理解して、振る舞いの背後には神経ネットワークがあって、でもそのネットワークの背後には広大な空白しかなく

それを見ている自分の神経ネットワークの背後も結局は広大な空白が広がっているだけで

心の実在ってなんなんだろうなどと考えました。

他人の心というのも結局は自分の心の中に表象されるのであれば、はたして他人の心なんてものが存在するのか、自他の違いってなんなんだろう、利他利己なんてものもフィクションなんじゃないかと思ったりし

もうひとつはトロッコ課題における倫理の問題なのですが、今日は時間がないので明日また取り上げたいと思います。

 

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