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「ブローカ野における階層的な人工文法の処理」

ヒトは普段意識しないで自由にことばを使いこなしますが、このことばというのはいったいどういう仕組みになっているのでしょうか。

どういう仕組と言われても今ひとつぴんとこないと思うので私達がどのようにしてことばをものにしてきたかを考えてみましょう。

最初はパパとかママとかの一語文、これがもう少し大きくなると「ブーブー来た」のような二語文、これがもっと大きくなってくると並べられる語数も増えてきて、小学校二年生位になると「はらぺこきつねが歩いていると、やせたひよこがやってきた。」というくらいの文章が読めるようになって、中学校にあがると「実験の結果、ペンを横にくわえていると楽しい単語を「楽しい単語だ」と判断するまでの時間が、悲しい単語を「悲しい単語だ」と判断する時間よりも短くなることが分かりました(教育出版 『笑顔という魔法』池谷裕二)」というようなややこしい文章まで読めるようになる。

でもこの「ややこしさ」というのが何かというと、これはひとつの文にどれだけのことばが重層的に埋め込まれているかという事になるのではないかと思います。

幼児から始まって大人になるまでことばが上手に理解できるようになる過程というのは、このことばの重層性、階層性をうまく処理できるようになる過程だと思うのですが、今日取り上げる論文はこの言葉の階層処理について調べたものです。

実験では階層的な構造を取る人工言語と非階層的な人工言語の二種類を読ませている時の脳活動を測定したのですが、言語中枢で知られる前頭葉の言語中枢であるブローカ野は階層的な人工言語に強く反応を示し、こういったことからブローカ野は階層的な情報処理に関わるのではないかということが述べられています。

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ポイント

本研究はヒトが階層的な情報処理をしている時にどのような神経基盤が関わっているかについて人工的な二種類の文法を用いて機能的MRIを使用して調査を行ったものである。

実験では人工的に創りだした階層的な構造を持った言語と非階層的な構造を持った言語を被験者に提示し、それを読み解いている時の脳活動の比較を行った。

結果ブローカ野と腹側運動前野の隣接縁(ブロードマン44/6野)は階層的な言語処理に際して高い活動を示し、このことからこれらの領域は人工言語の処理に際して階層的な情報処理に関わることが考えられた。

参考URL :Hierarchical artificial grammar processing engages Broca's area.

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