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「脳はヒト科の文法と非ヒト科の文法を識別する:機能的局在性と構造的連結」

普段日常的に私達はことばを使いこなしていますが、このことばというのはヒト以外の動物も使えるものなのでしょうか。

添付の動画を見る限り、チンパンジーは訓練しだいではある程度ヒトの言語を理解できるように思われるのですが、サルの言語能力とヒトの言語能力を決定的に分けるものはあるのでしょうか。

今日取り上げる論文は人の言語能力に関わる脳活動を詳しく調べたものです。

世界にはいろんな言葉がありますが、一つ共通している特徴があって、ひとつの文にいろんな文が埋め込まれているというのがあります。

これは

「わたしは昨日サリーが買ってきたコーラを飲むつもりだ」

という文章であれば

「私はコーラを飲むつもりだ」という文章の中に「昨日サリーが買ってきた」という文が埋め込まれていると思うのですが、こんなふうにヒトのことばというのはロシアのマトリョーシカ人形のように入れ込み構造、階層構造になっているという特徴があります。

実験では上記の文のように階層的な構造を持つものと階層的な構造を持たないものの二種類を見せて、その脳活動を比較したそうです。

結果を述べるといわゆるヒトらしい階層的な文に対しては進化的に新しいとされるブローカ野(ブロードマン44,45野)が活動し、階層構造を持たないシンプルな文にはブローカ野に隣接する進化的に古い部分である前頭弁蓋部が活動しており、ヒトの階層構造を含む言語処理というのはやはり特殊ではないかということが述べられています。

 

ポイント

人の言語の特徴として階層的な構造をとっていることがあげられる。これは階層構造を含まない非ヒト科の文法と一線を画すものである。

本研究では階層的な構造を持つ文と階層的な構造を持たない分の二種類を提示した時の脳活動を測定した。

結果、非階層的な文に対しては前頭弁蓋部は活動するがブローカ野(ブロードマン44,45野)は活動しないことが示され、言語に関わるとされる左下前頭回においても文の種類により異なるネットワークが関わることが示された。

参考URL :The brain differentiates human and non-human grammars: functional localization and structural connectivity.

動画のようにチンパンジーはそこの塩をボールの上にふりかけてのような文章は理解できるけど、そこの塩を私が昨日買ってきた袋に入っていたボールの上にふりかけてのような文を理解できないということなのかなと思います。

それにしてもどんな経緯でこのチンパンジーがkanjiなんて名前になったんだろうとも思うのですが(´・ω・`)

少し詳しいことを書くと前頭弁蓋部もブローカ野の一部でブロードマン44野に相当すると思っていたのですが、この論文を見るとイコールではないとのことで詳しくはFIG.2を参照にしていただければと思いますm(_ _)m

 

 

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