フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

ポジティブ心理学:思考と行動に感情はどう影響するのか?

喜びと哀しみ、愛情と憎しみ、興味深さと無関心、これらの根本的な違いとは何でしょう?

今日取り上げる論文は肯定的な感情の機能についての仮説を説明したものです。

一言で言えば、ポジティブな感情はヒトの思考や行動を拡張する、それに対してネガティブな感情は人の思考や行動を狭小化する、こういった違いがあるのではないかということが述べられています。

恐怖や不安といったものを考えてみましょう。

こういった感情というのは人の考えや行動を紋切り型にするのではないかと思います。ネガティブな感情に襲われた人間は、往々にして攻撃か逃避かの2つのどちらかを揺れ動くことになる。

無限とも言えるヒト科が持つ思考-行動のバリエーションがネガティブな感情によって攻撃-逃避の二択にまで絞りこまれてしまう。

これに対し、ポジティブな感情な時、喜んでたり、楽しかったり、幸せな時というのはヒトの思考-行動パターンを拡張する。

あれもできる、これもできる、あれはどうかというふうに、ポジティブな感情というのはヒトの思考-行動パターンを拡張する働きがあるといえるのではないかと思います。

こういったポジティブな感情に突き動かされた人間はさらに多くの発見、能力の拡張を得て、さらにポジティブになり、さらに思考-行動パターンが拡張される、そういったスパイラルに入っていくのではないかと思います。

ネガティブな感情はヒトの思考-行動パターンを狭小化し、ポジティブな感情は逆にそれを拡張し、さらに大きな変化を引き出していくというのがこの論文の趣旨ではないかと思います。

【要旨】
「拡張-積み上げ仮説とは、楽しみや興味、満足感や愛情といった様々な肯定的な感情の機能について説明するものである。この仮説の鍵になる考え方は肯定的な感情は個人の思考や行動のレパートリーを瞬間的に拡張するというものである。楽しみの感情は遊びへの気持ちを駆り立て、興味深さは探求へ駆り立て、満足感は喜びを引き出し、愛情はこれらの気持ちを一つにまとめ安全を希求する。このような肯定的感情から引き出される拡張的な思考傾向は、恐怖や不安といった否定的感情から引き出される思考の狭小化(闘争か逃走かの二者択一など)と対照的である。この仮説はさらにこの拡張された思考-行動が新たな変容段階への積み上げへ関わっていくことに着目している。肯定的な感情は個人の思考と行動を拡張し、そのことで個人の活動をより活発にし、結果的に個人の資質を改善することになる、そしてこのことがより成功の可能性を高めることになる。本稿では拡張-積み上げ仮説を支持する近年の研究を取り上げ、さらにはこの肯定的感情のスパイラルが健康と幸福につながっていることを示す。」

参考URL:The broaden-and-build theory of positive emotions.


コメント

この論文を読んでいると、ポジティブでいれば上手くいくし、ポジティブな考え方が人類を救う道だという気分になっても来るのだけれども、それもどうかなと思います。

哀しみや苦しみを基底に持たないポジティブさはどこか片手落ちのような気がして

仏教にしてもキリスト教にしても、あるいは儒教も、そのベースにあるのはヒトが持つ抜きがたいえげつなさ、汚さ、苦しみ、どうしようも無さに対する失望から始まっているような気がして

苦しみを知らないポジティブ-ポジティブな人というのは、やはり何かが抜け落ちているような気がするのです。

とはいえ、ポジティブな感情がヒトの思考-行動パターンを拡張するのは確かだと思います。この動画は感動しました。時間のある方はどうぞ。

http://digitalcast.jp/v/14947/

 

 

※一日一つ限定ですが、個人や非営利団体を対象に脳科学に関するご質問・調査を無料で行います。興味のある方はホームページの「お問い合わせ」ボタンからどうぞ。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします