フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

不安障害、海馬、扁桃体

あまり名前を聞くことはありませんが社交不安障害(SAD:social anxiety disorder)というものがあります。

あがり症のきついバージョンだと思うのですが、特定の社交場面、人前で挨拶したり、目上の人と話したり、電話をとったり、特定の社交場面に限って、著しい不安症状が現れるものです。

生涯有病率は10%前後とも言われており、下は5歳から上は管理職につく40代位までストレスなんかが引き金になって幅広い年代で起こりうるものだそうです。

これとは別に全般性不安障害といって、場面を問わず、あらゆる状況に不安を感じるものもあるそうですが、今日取り上げる論文は全般性不安障害における脳体積の変化を調べたものです。

具体的には海馬と扁桃体の体積を調べたものですが、やはり有病者ではこれらの体積の減少が見られたことが述べられています。

【要旨】

「背景:PTSDや大うつ病の患者では扁桃体と海馬に構造的にも機能的にも異常をきたすことが知られている。しかし社会不安障害における知見は得られていない。方法:24名の全般性不安障害患者と24名の健常者を対象にMRIを使用して脳の3次元計測を行い、加えて臨床診断を行った。結果:対照群と比較して全般性不安障害患者では扁桃体(13%)と海馬(8%)で体積の減少が認められた。扁桃体の体積現象に関しては男性で有意差が見られたが女性では見られなかった。制限事項:今回社会不安障害の一亜型である全般性不安障害患者のみを対象にし、うつ病を併発している患者を除外した。そのため今回の症例は典型例とはいえない。結論:今回はじめて全般性不安障害患者の脳体積の変性について報告を行った。今後、治療の成功によって体積の回復が起こるのか、治療反応を予測する手がかりになるのかといったことの検証が望まれる。」

参考URL:Reduced amygdalar and hippocampal size in adults with generalized social phobia.


コメント

生涯発症率10%前後、頭文字を取ってSADともいわれる社交不安障害ですが、20代から30代前半の一時期、おそらくこの症状と付き合ってたことがあります。どれくらいの程度かわかりませんが、なかなかきつかったです(-_-;)

病院に来る実習生でも、時にこんな症状を示す子がいて、ほぼ100%バイザーの理解を得られず「気持ちの問題だ」で実習中止に追い込まれていくのを見るのはなかなかつらいものです。

一年、二年、三年、五年くらいは人生遠回りしても、いろいろ見えないものも見れるので悪くはないとは思うけれども、医者にかかってどうにかなるものだったら、下手な精神論で追い込むよりもそっちのほうがずっとよいと思います。

まあどこまでが気持ちの問題で、どこまでが病気の問題かはわかりませんが、

いずれにしても脳が環境に適応していないことは確かで

機能不全でひしゃげているような状態なのかもしれません。

可塑性、柔軟性の代名詞みたいな脳なので、いずれはポヨヨンと、また別の形となって脳は元気を取り戻してくれます。

時期を見たシステムの変性過程、つまりは病気というものは誰に対しても訪れます。自分や相手を追い込むことなく上手にステップを切っていきたいものです。

 

 

※一日一つ限定ですが、個人や非営利団体を対象に脳科学に関するご質問・調査を無料で行います。興味のある方はホームページの「お問い合わせ」ボタンからどうぞ。

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします