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ミラーニューロンシステムとはなにか?

しばらく脳のネットワーク解析についての論文を取り上げてきましたが、今日から新しくミラーニューロンについての論文を取り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。

今回のテーマでは、この「サルとヒトの動作の理解についてのミラーニューロン理論の8つの問題」という論文をベースに、この論文に引用されている論文を一通り当たっていきたいと思います。

今日取り上げるのは、このベースになる論文なのですが、ミラーニューロンが動作の理解にかかわるというミラーニューロンの仮説を批判的に検討したものです。

ミラーニューロン理論の問題点が8つ挙げられており、

①サルを対象にした実験で、ミラーニューロンが動作の理解に関わるという証拠を示したものはない

②動作の理解はミラーニューロン以外の神経機構によってなされている

③一次運動野がミラーニューロンを含んでいる

④マカクザルのミラーニューロンとヒトのミラーシステムが相同であるとは言い切れない

⑤ヒトにおける動作の理解と神経生理学的な「ミラーシステム」の間には乖離が見られる

⑥動作の理解と動作の生成の間に乖離が見られる

⑦下前頭回の損傷は動作の理解の障害とは相関しない

⑧ミラーシステムが言語理解に関わるという理論についてはこれを証明しうる経験的な基盤がない

といったものです。
簡潔にこの論文の要旨を示すと、ミラーニューロンの活動は単にパブロフの犬の実験に見られるような感覚-運動連合反応を反映しているだけではないか、

他者の動作を理解できるのは、脳の中に具象的な運動や感覚といったものを超えた、より上位の抽象的な「概念」があって、

これが感覚-運動反応を修飾することでなされるのであって、ある特定のシステムが動作をそのまま理解するという直接的な形でなされるのではない、ということだと思います。

【要旨】

「マカクザルの前頭葉でミラーニューロンが発見され、認知における運動/身体化理論に対する関心が再び大きく高まってきている。本稿はミラーニューロンが運動の理解の基盤になっているという理論を批判的に論証するものである。サルを対象にした研究からはこの理論を直接証明できるものがなく、ヒトを対象にした研究では、この理論に対して反証的な結果が見られている。」

参考URL:
Eight problems for the mirror neuron theory of action understanding in monkeys and humans.

 

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