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精神疾患に祈りは効くのか?

困った時の神頼みでもないのですが、人間というのは結構な頻度で天に向かって手を合わせます。

しかしながら本当に祈りというのは効果があるのでしょうか?

今回取り上げる論文は、抑うつ症状や不安障害に対して、どの程度祈りの効果があるのかについて調べたものになります。

対象者は、うつ病、もしくは不安障害の診断基準に該当する18歳以上の男女63名であり、

無作為に2群に分けられた後、祈りの介入がなされています。

祈りについては、60代後半のあるキリスト教の会派で正当な訓練を受けた一人の女性が、直接個人に対面して祈る介入が、毎週1回ずつ6週間に渡って行われました。

祈りは直接個人に対面する形で行われ、最初の1回は90分、その後は60分ずつ行われています。

2群に分けられ、最初の6週間祈りを受けなかった対照群に対する効果は、その後、祈りを受けるクロスオーバー法(交差法)で調べられています。

また、その効果については、ハミルトン不安尺度、ハミルトン抑うつ尺度、楽観性尺度、日常のスピリチュアル体験尺度、および唾液中コルチゾール濃度を指標にして調べています。

結果を述べると6週間の祈りの介入で心理学的評価の改善は見られたのですが、コルチゾール濃度の変化は見られなかったことが述べられています。

結果を見る限り、不安症状や抑うつ症状への効果はしっかり出ているようですが、ストレス状態の指標であるコルチゾール濃度に変化がなかったのが不思議だと思ったり、

あるいは痛みの治療で前帯状皮質を破壊すると、痛みは感じても苦しさは感じないという研究があったことを思い出しました。

スピリチュアルというと、語感がどこまでもいかがわしいのですが、

世界の中での存在の仕方、存在の技法、と捉えれば、祈りによって世界とのつながりを取り戻すことで苦しみが減るということは大いに有りうるのかな、と思いました。

【参考文献】

Boelens, Peter A et al. “A randomized trial of the effect of prayer on depression and anxiety.” International journal of psychiatry in medicine vol. 39,4 (2009): 377-92. doi:10.2190/PM.39.4.c

【要旨】

目的:
うつ病、不安、前向きな感情、唾液コルチゾールレベルに対する直接接触の人から人への祈りの効果を調査すること。

設計、設定、および参加者:
オフィス環境で実施されたうつ病または不安神経症を伴うクロスオーバー臨床試験。祈りの介入群または対照群への無作為化に続いて、被験者(95%の女性)は、うつ病と不安のハミルトン評価尺度、生活志向テスト、毎日の精神的経験尺度を完了し、コルチゾールレベルの測定を受けました。直接の人から人への祈りの接触介入グループの個人は、週に6回の1時間の祈りのセッションを受けましたが、対照グループの個人は受けませんでした。祈りのセッションの完了後と1か月後に、両方のグループで評価尺度とコルチゾールレベルが繰り返されました。ANOVAを使用して、各グループの祈りの前後の測定値を比較しました。

結果:
試験の完了時に、祈りの介入を受けた参加者は、対照と比較して、うつ病と不安の有意な改善、ならびに毎日の精神的経験と楽観主義の増加を示しました(すべての場合でp <0.01)。祈りのグループの被験者は、最後の祈りのセッション後少なくとも1か月間、これらの有意な改善(すべての場合でp <0.01)を維持しました。対照群の参加者は、研究中に有意な変化を示さなかった。コルチゾールレベルは、介入群と​​対照群の間、または祈りの前後の状態の間で有意差はありませんでした。

結論:
直接接触する人から人への祈りは、うつ病や不安のある患者の標準的な医療の補助として役立つかもしれません。この分野でのさらなる研究が示されています。

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