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心疾患と祈りの効果

祈りというのは普遍的な行為で、とりわけ辛いことや大変な状態に置かれたときには、人は祈らずにはいられないようにできています。

しかしながら祈りというのは本当に効果があるのでしょうか。

今回取り上げる論文は、心疾患に対する祈りの効果を調べたものになります。

この研究では、アメリカのメイヨー・クリニックで冠動脈疾患で入院していたもの799名を対象に祈りの効果を検証しています。

祈りの介入は冠動脈疾患で入院していた患者が退院した日から開始されています。

祈りについては地域社会から募集された一般人215名が行い、ファーストネームと性別、診断名、病状、年齢について知らされた上で、最低週に1回、26週間続けて祈るように指示されました。一人当たりの担当は平均7.4名(中央値5名、1~100名)でした。

患者は危険因子の有無(70歳以上、糖尿病あり、心筋梗塞既往あり、脳血管疾患あり、末梢血管障害あり)で重症群と軽症群に分けられました。

効果判定については、退院後26週目時点の死亡、心停止、冠動脈血行再建術、心血管再入院、または心血管疾患による救急部門(ED)来院の有無で行われました。

結果を述べると、介入群と対照群では統計学的に有意差がなかったことが示されています。

原因としては、祈りの介入方法に統制が取れていなかったことや、患者側の祈りに対する信念が未評価であったことなどがあったのではないかと述べられています。

グラフを見る限りでは、なんとなくなにかありそうな気配はあるのですが、難しいなと思いました。

【参考文献】

Aviles, J M et al. “Intercessory prayer and cardiovascular disease progression in a coronary care unit population: a randomized controlled trial.” Mayo Clinic proceedings vol. 76,12 (2001): 1192-8. doi:10.4065/76.12.1192

【要旨】

目的
退院後の心血管疾患の進行に対する、広く実践されている補完療法である執り成しの祈りの効果を決定すること。

患者と方法
1997年から1999年の間に実施されたこのランダム化比較試験では、合計799人の冠状動脈治療ユニットの患者が退院時に執り成しの祈りのグループまたは対照グループにランダム化されました。執り成しの祈り、すなわち、一人以上の人が別の人に代わって祈ることは、患者ごとに5人の執り成しによって、少なくとも週に1回、26週間にわたって行われました。26週間後の主要なエンドポイントは、死亡、心停止、心血管疾患の再入院、冠状動脈血行再建術、または心血管疾患の救急科訪問のいずれかでした。患者は、5つの危険因子(年齢= 70歳、糖尿病、以前の心筋梗塞、脳血管疾患)のいずれかの存在に基づいて高リスクグループに分けられました。、または末梢血管疾患)またはその後の主要なイベントの低リスクグループ(危険因子の欠如)。

結果
26週目に、執り成しの祈りのグループの25.6%と対照グループの29.3%で主要エンドポイントが発生しました(オッズ比[OR]、0.83 [95%信頼区間(CI)、0.60–1.14]; P =。 25)。高リスク患者では、祈りのグループで31.0%、対照グループで33.3%(OR、0.90 [95%CI、0.60–1.34]; P = .60)が主要エンドポイントを経験しました。低リスク患者では、主要エンドポイントは、祈りのグループで17.0%、対照グループで24.1%に発生しました(OR、0.65 [95%CI、0.20-1.36]; P = .12)。

結論
この研究で提供されたように、執り成しの祈りは、冠状動脈治療室に入院した後の医学的転帰に有意な影響を及ぼしませんでした。

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