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不安障害への治療反応

どんな疾患であれ、治療を行う上で大事になってくるのが、予後予測だと思うのですが、

精神疾患、とりわけ不安障害の予後予測というのはどのような方法があるのでしょうか。

不安障害は治療の反応に個人差が大きいようですが、今回取り上げる論文は、治療反応に関係するバイオマーカー(生理学的指標)についての総説論文になります。

Neurobiological markers predicting treatment response in anxiety disorders: A systematic review and implications for clinical application

この研究では不安障害の治療反応と生理学的指標について調べた研究を取りまとめて調べているのですが、比較的信頼性の高いバイオマーカーとして

・セロトニントランスポーター遺伝子多型(5-HTTLPR/rs25531)

・前帯状皮質

・心拍変動

の3つであったことが述べられています。

セロトニントランスポーター遺伝子というのは、セロトニンの代謝をコントロールに関わる遺伝子ですが、この遺伝子の中でも通常のものとは異なるタイプの遺伝子(セロトニントランスポーター遺伝子多型)があり、不安障害の予後に影響することが調べられているようです。

また前帯状皮質というのは、感情的な処理と認知的な処理の橋渡しをするような領域ですが、この領域の活動も不安障害の予後に関係することが述べられています。

また心拍変動というのは、心拍数のリズムのゆらぎのようなもので、交感神経系の活動を示すものになります。この心拍変動も不安障害の治療反応を考える上で有用なことが調べられているようです。

このように不安障害の予後を考える上で役に立ちそうなバイオマーカーはいくつかあるのですが、

一般に予後予測は確率論であり、解釈については慎重であったほうが良いのかなと思いました。

【参考文献】

Lueken, U., Zierhut, K. C., Hahn, T., Straube, B., Kircher, T., Reif, A., Richter, J., Hamm, A., Wittchen, H. U., & Domschke, K. (2016). Neurobiological markers predicting treatment response in anxiety disorders: A systematic review and implications for clinical application. Neuroscience and biobehavioral reviews, 66, 143–162. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2016.04.005

【要旨】

不安障害は、個人的および社会的負担が高い精神障害の最大のグループを構成している。治療反応の神経生物学的マーカーは、層別医療アプローチを通知することによって反応率を改善する可能性を秘めている。不安障害における治療反応(薬理学的および/または心理療法的治療)の遺伝的、神経画像および他の生理学的マーカーの予測値の現在の証拠について系統的レビューが行われた。2015年3月までに公開された研究は、PubMed、Web of Science、PsycINFO、Embase、およびCENTRALでの検索によって選択されました。60の研究が含まれ、そのうち27は遺伝学、17は神経画像、16は他のマーカーに関するものでした。機能的な5-HTTLPR / rs25531遺伝子型の予備的な証拠が見つかった。治療結果を調節するための前帯状皮質機能と心血管の柔軟性。研究は方法論の質がかなり異なっていた。より厳格な研究方法論の適用、個々の患者レベルでの予測、および独立したサンプルでの相互検証は、バイオマーカー研究の次の段階を設定し、「メンタルヘルス予測」の新しい分野での誤った結論を回避するために推奨される。

 

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