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社会的攻撃と報酬系

私達人間は比較的おとなしい生き物ですが、たまにタガが外れて荒れ狂うことがあります。

社会的に正しくないことをしたとみなされた人間は、しばしば集団リンチのような集中砲火を浴びて社会的に抹殺されることがありますが、

なぜ私達は、タガが外れたように攻撃的になってしまうのでしょうか?

今回取り上げる論文は、政治的立場と社会的攻撃の関係性について脳活動の観点から調べたものになります。

方法

・対象となったのは、リベラルな政治的傾向を持つシカゴ在住の成人男女29名

・実験では、被験者には、簡単な政治的背景(保守派のもの、リベラル派のもの)を説明した上で、政治的暴動が行われている場面の写真を提示した。

・画像の提示は60回行われた。

・被験者には写真を見た後、どの程度、その暴動がどの程度適切かについて、7段階で評価させ、その時の脳活動について機能的MRIで測定を行った。

結果・考察

・暴動に対する評価と脳活動の間に関連性が見られた。

・政治的暴動に対する評価が高い場合、腹内側前頭前野や線条体の活動が増加し、扁桃体の活動が低下した。

・腹内側前頭前野は価値判断を行う領域であり、線条体は報酬に対して反応する領域である。

・扁桃体は不快感に関わる領域である。

・これらの結果から、自分の政治的立場に沿った暴動については、ポジティブな価値として認識され、暴動に伴う不快感が抑制されることが考えられた。

私的考察

自分の政治的主張に沿うような暴力については、脳の中の報酬系と呼ばれる領域が活動していることが示されています。

この報酬系というのは、個体を欲しい物に向かって追っかけさせるような働きを持つ仕組みで、

スイーツや薬物、仕事など依存症との関連も指摘されている領域になります。

私達はしばしば、道義的に好ましくないことをした人物を攻撃することがありますが、こういった行動の背景には、その行動を快と感じさせるような脳の仕組みがあるからかなと思いました。

スイーツもお仕事も、社会的な攻撃行動も、嗜癖以前の嗜み程度に留められればいいのだろうなと考えたり、

人としてたがを外さず一生を終えるのは、結構至難の業なのかなと思ったりしました。

【参考文献】

Workman, Clifford I et al. “The Dark Side of Morality - Neural Mechanisms Underpinning Moral Convictions and Support for Violence.” AJOB neuroscience vol. 11,4 (2020): 269-284. doi:10.1080/21507740.2020.1811798

 

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