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祈りと体外受精

不妊というのは、結構なストレスであり、それこそ祈りたくなる場面もあるのですが、

不妊治療に祈りは有効なのでしょうか?

今回取り上げる論文は、不妊治療に対する祈りの効果について調べたものになります。

方法

対象となったのは韓国の不妊治療中の女性219名(26~46歳;平均33.9±4.7)で、最終的に体外受精による胚移植に至った169名が解析対象にされています。

この研究では、不妊治療中の被験者は祈りが行われるものと行われないものの2群に無作為に分けられましたが、祈りの実験を行うこと自体も伝えられませんでした。

また研究者もどの被験者が祈りの対象となったのかを実験終了時まで知らされていませんでした。

祈りについては韓国国外に住む様々な宗派のキリスト教系の祈祷者に被験者の写真のみが送られ、ホルモン治療開始直後から祈りの介入が3週間行われました。

祈りの介入は3段階で行われており、まず第一段階担当の祈祷者は、被験者5人一組の写真を見た上で、無事妊娠するように直接的に祈ります。また第二段階担当の祈祷者は、第一段階担当の祈祷者の祈りが叶うように祈ります。さらに第三段階担当の祈祷者は、この祈りによる介入全体がうまくいくように祈ります。

祈りの効果についてはの判定は、超音波検査で臨床的な妊娠が確認できたかどうかという二分法で行われました。

結果

結果を示すと、

・着床率は祈り介入群で有意に高い(祈り介入群16.3% に対して対照群 8%, P=.0005)

・妊娠率も祈り介入群で有意に高い(祈り介入群50%に対して対照群26%、P=0.0013)

という結果となっています。

またこの実験では、被験者については研究が行われること自体が伏せられていること、

研究者も祈りの対象者を最後まで知ることがない設定で研究が行われていること、

また国外に住む祈祷者も写真の他には被験者と接点がない設定で祈りの介入が行われたことから

プラセボ効果が入る余地はないのですが、着床率、妊娠率ともに有意差が見られています。

この研究一つから結論づけることはできないとは思いますが、祈りの効果というのは少なくとも完全否定はできないのかなと思いました。

 

【参考文献】

Cha, K Y, and D P Wirth. “Does prayer influence the success of in vitro fertilization-embryo transfer? Report of a masked, randomized trial.” The Journal of reproductive medicine vol. 46,9 (2001): 781-7.

【要旨】

目的: 体外受精-胚移植(IVF-ET)で治療されている女性の妊娠率に対する執り成しの祈り(IP)の潜在的な影響を評価すること。

研究計画: 患者と医療提供者に介入について知らされていない、前向き二重盲検ランダム化臨床試験。すべてのデータが収集され、臨床転帰がわかるまで、統計家と研究者はマスクされました。設定は、韓国のソウルにあるチャ病院でのIVF-ETプログラムでした。IPは、米国、カナダ、オーストラリアの祈りのグループによって実施されました。調査員は米国の三次医療センターにいました。患者は、4ヶ月間にわたってIVF-ETで連続的に治療された26-46歳の219人の女性でした。ランダム化は、2つのグループ(遠隔IPとIPなし)で変数を階層化した後に実行されました。2つのグループの臨床妊娠率が主なアウトカム指標でした。

結果: 臨床妊娠がわかった後、対数線形モデルで多重比較を評価した後、IPの効果を評価するためにデータのマスクを解除しました。IPグループは非IP率と比較して高い妊娠率を示しました(50%対26%、P = .0013)。IPグループはより高い着床率を示しました(16.3%対8%、P = .0005)。観察された効果は、臨床または検査提供者および臨床変数とは無関係でした。

結論: データは予備的なものとして解釈されるべきですが、IVF-ETの結果に対するIPの影響について統計的に有意な差が観察されました。

 

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