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なぜあなたの思想は過激なのか?

私達人間は自分中心に物事を見る生き物です。

それゆえどんな偏った思想の人に聞いても自分は中道と答えるとは思うのですが、一般的に見た場合、思想の偏りというのは左から右まで様々です。

ある識者は、特定の思想があるのではなく、あるのは「主義(ISM)」だけであり、右にしても左にしても内容は二の次だ、とも述べていますが、これはどこまで本当なのでしょうか?

今回取り上げる論文は認知的柔軟性と政治的傾向の関係について調べたものです。

認知的柔軟性とはいわゆる頭の柔らかさ、視点の柔らかさであり、ある困難な状況に直面した時に多面的に物事を見れるような認知能力になります。

この研究では、認知的柔軟性が低いほど、政治的には左右を問わず急進的になるのではないかという仮説のものと、実証研究をしています。これはどのような方法で進められたのでしょうか?

研究方法

研究の対象になったのはAmazonのクラウドサービスを用いて集められた米国人743名で、心的な調査項目としては

①共和党主義者か民主党主義者か、あるいはそれ以外か

②支持政党への愛着感はどの程度か(Dynamic Identity Fusion Index :自分との党派方針との円の重なり具合で表示)

③保守派尺度(Conservatism Scale ):社会的保守主義や経済的保守主義を図る指標

④認知的柔軟性試験(リモートアソシエイトテスト;Remote Associates Test):一見、関連のない3つの単語をつなげる言葉を答える課題(アイパッド、パイ、くだもの→りんご、など)

⑤認知的柔軟性試験(ウィスコンシンカード分類課題):記された色と数字と記号が違うカードを、変化していく判別ルールの推定しながら分類作業をすすめる課題

⑥認知的柔軟性試験(拡散的思考タスク;Alternative Uses Test): レンガやハサミなどの日用品を提示し、本来の用途以外の使用方法をできるだけ多く考える課題

引用:https://davebirss.com/altuses/

これらの心理的検査を行った後に、党派的傾向とどのような関係があるかについて、統計学的な関係性について調べています。

結果

結果を述べると

①左右の党派を問わず、認知的柔軟性が低いほど、思想的偏りが強い

②認知的柔軟性の低さと保守主義の間には弱い関連がある

③経済的保守主義については、認知的柔軟性を必ずしも反映しない

ということが述べられています。

とはいえ、アメリカの経済的保守主義というのは、伝統的に自由主義的なことを考えると、何が保守で何が革新かというのは、

なかなかに解釈が難しいなあと思いました。

興味深いです。

【参考文献】

Zmigrod, Leor et al. “The partisan mind: Is extreme political partisanship related to cognitive inflexibility?.” Journal of experimental psychology. General vol. 149,3 (2020): 407-418. doi:10.1037/xge0000661

【要旨】

党派主義による敵意、イデオロギーの二極化、および政治的教義の台頭は、心理的硬直と政治的党派主義との関係についての重要な問題を再燃させました。2つの競合する仮説が提案されています。1つの仮説は精神的硬直が保守的な政治的方向性に関連していると主張し、もう1つの仮説はそれが政治的スペクトル全体の党派の極限を反映していることを示唆しています。700人を超える米国市民のサンプルでは、​​党派的な過激性は、政治的方向性に関係なく、認知の柔軟性に関する3つの独立した認知評価全体で認知の柔軟性のレベルが低いことに関連していました。これは、二次回帰、ベイズ因子分析、中断された回帰など、複数の統計分析で明らかでした。これらの調査結果は、個人が非政治的情報を処理して応答する際の硬直性が、党派的アイデンティティの極限に関連している可能性があることを示唆しています。

 

 

 

 

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