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宇宙と珈琲、今の今

息子の希望と古巣への里帰りも兼ねて筑波に数年ぶりに訪れる。明日はJAXAで施設見学、目指せアストロノーツだ。それにしても電車が開通する前に生活していた世代なので様変わりに驚く。

北関東の鄙びた集落地帯はポルシェやベントレーの販売店に変わり、馴染みの店も殆ど潰れている。変わりすぎていていて今自分がどこにいるかもわからない。変わる中で変わらないものがないかと車の中から目を凝らす。ラブホ、パチンコ屋、漫画喫茶、珈琲豆屋、ケーキ屋さんあたりか。基本的に人は快楽や官能的なものに対して保守的な生き物なのかと思う。

馴染みのカフェに行き店内を見渡す。小洒落た品の良い中国の学生と日本人の女の子がウィーン菓子をつまみながら英語であれこれ話している。若者と留学生と濃い恋愛という文化は登場人物を変えながらもまだこの北関東の一都市に残っているらしい。

カフェコンディトライ シーゲル

変わる中でも変わらないもの、文化の基体のようなものとはなんだろう。ある南米の一都市の生まれ、繁栄し、滅亡するまでをある一家の歴史とともに描いた小説に「百年の孤独」というものがある。性器と排泄、殺戮をモチーフに様々な形で繰り返し描写される。突き詰めて行けば人の世はエロスとタナトス、人はその間のどこかで仕事や役割を通じてなんらなのポジションを取るのだろう。

そんなことをぼんやり考えながら馴染みのカフェのよこっちょにあるコービー豆の焙煎屋さんに行ってみた。20年前に喫茶店を目指していたときに珈琲豆のアレコレを教えてもらった店だ。

コーヒーファクトリー

もともと職人気質で美味しい珈琲豆を出す店だったが、店の中を見ると弟子がバリスタ日本一、さらにはバリスタ世界一になったとの記事が貼ってある。こだわりの懐かしい店はいつのまにかワールドワイドなお店になっていた。中年だったマスターも老年に差し掛かっており、懐かしいなと思って遠くから見つめる。マスターを見ると横にいる若い子になにか一生懸命に伝えている。若いバリスタだろうか。

ああ、いけないなと思う。老年になったマスターの目は今の今も”今”を見て、今を生きている。中年になったノスタルジックな私の目は”昔”を見て、昔を生きている。たまには昔を振り返るのもいいけど、やはり見るべきは、目を向けるべきは”今”と”これから”なのかなと思う。

マスターを横目にカプチーノのテイクアウトを頂き、気の利いたパン屋で買ったクロワッサンを馴染みの公園に行きむしゃむしゃとかじる。

洞峰公園

暖かい日差しの中、子どもたちは公園の野鳥と戯れ、パンとコーヒーは香り良い。幸せというのは実はそんなに高くない。千円でお釣りが来るのかなと考えたりする。余裕のある時間とそれなりの健康、家族の平和が保たれていれば人はしっかりと幸せに生きていけるのかもしれない。

お目当てのJAXAは素晴らしかった。大きな体育館ほどの建物の中にロケットや宇宙ステーション、人工衛星の実物大の模型が山程並べてあって解説までしてくれる。しかも無料だ。

JAXA見学

子供は宇宙クイズコーナーであれこれ格闘する。もっと宇宙のことを知りたいというが、欲望が宇宙に向かって何かをするとか何かを作るというよりは、知ることだけの方に向いているのがちょっと不安だったりする。私と同じで知識オタクの方に向かっていくのだろうか。それはそれで良いのかもしれないが。

しかし宇宙をリアルに感じさせる建物にいると、国とか国籍とかで別れていがみ合うことの無意味さを感じたりする。

近くの宿にチェックインし、備え付けのヤンキー漫画をパラパラとめくる。若い男の子が高校同士で対立し、闘い合う様子に感情移入する。結果、数時間のうちに宇宙から見た地球の超マクロフレームと、地に足がついた徒歩圏内の超ミクロフレームの世界観の両方体験することになる。

前者が高尚で後者がアホだというわけでもないのだろう。おそらくヒトは置かれたフレームに合わせてものを考えたり、動いたりするように設計されているのだろう。大事なのは置かれたフレームは仮のもので、いろんなフレームもあることを理解しつつ何かをすることかもしれない。たまには空や宇宙を動画で見てみるのもよいのだろう。

富山から一泊二日のつくば旅行だったが、得ることは多かった。

今を起点として今を見て、

できることなら大きな枠組みで世界を見て、

時間と健康、家族を大事にということだろうか。

簡単なような難しいような課題だが、まあ頑張ろう。

 

 

 

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