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「記憶における自己関連付け効果:メタアナリシス」

病院で認知症の患者さんを見ていると、どんどんどんどんいろんなことを忘れていきますが、案外自分の顔や名前というのは最後の最後まで覚えているような気がします。

また自分のことだけでなく、自分がらみのもの、例えばお気に入りのタオルだったり、昔旅先で買ってきた小物だったり、昔乗ってた車のことだとかというのは割合記憶にとどまっているような気がします。

認知症の患者に限らず、私達は自分絡みの情報というのは記憶に残る傾向があると思うのですが、こういった現象は心理学では自己関連付け効果と呼ばれているようです。

これは例えばただの車の写真を見せるのと、車の横の自分が立っている写真を見せるのでは、後者のほうが記憶の残りやすい現象をいうのですが、なぜこういったことが起こるのでしょうか。

今日取り上げる論文はこの自己関連付け効果について行われた研究を総括したものになります。

概要を述べると

①記憶というものはタグ付けが多いほど頭に残りやすい

②自己というのはそれ自体が非常に多くのタグから構成されている

③それゆえ自己と関連付けられた記憶というのは頭に残りやすい

ということではないかと思います。

これを簡単に示すと、車が道路にポツネンと止まっている写真であれば

車――道路(tag;アスファルト、固い)

ですが、車の横に自分がいる写真であれば

車――自分(tag;男性、39歳、秋田出身、料理好き、メンタル弱い、風邪ひきやすい、医療職、バツイチ・・×1000)

というふうに膨大なタグが付いた対象と結びつくことで車という対象が記憶に残りやすくなるということではないかと思います。

インパクトの強い文章を書きたかったら「あなた」という言葉を使いなさいということを聞いたことがありますが、これも人間というのは、ただの情報よりも自分が関連した情報を頭に留めやすいためなのかなと思いました。

【要旨】
本稿では記憶における自己関連付け効果について行われた研究を振り返りその根拠についての考察を行った。メタアナリシスの結果からは自己に関連付けて記憶する方法では他者や他の意味に関連付けて記憶するよりも高い記憶効果があることが示された。従来の理論に一致するように自己関連付け効果は構成的で精緻化された処理であった。メタアナリシスの結果からは、この自己関連付け効果は(a)自己関連刺激が他者関連刺激と比べた場合それほど強くないこと(b)比較対象が構成的かつ精緻化を伴うものであった場合その差は少なくなることからも上記の事実が示唆された。このような結果から自己関連付け効果とは、自己という対象が日常的によく使われる概念であり、精緻化と構成化が促されやすい対象であり、それ故記憶に留められやすいということが考えられた。

参考URL:The self-reference effect in memory: a meta-analysis.

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