
扁桃体は二股をかける?
「二股をかける」ということばがあります。
それでいけば扁桃体というのは二股をかけているのかいないのか、どっちをむいているのか分からないような状況があったそうです。
扁桃体というのは何と何に二股をかけていたのか?
一つはボトムアップ的な情報です。
扁桃体というのは怖いもの、危ないもの、性愛的なもの、あやしいもの、不明瞭なもの、つまりは生存に関わるような情報を見るとついつい反応してしまう。
先生に黒板を見ているようにと言われてもそんなことは関係ない。注意がどこに向いていようが、気になるものがあれば、ついついそっちに反応してしまう。
こういったことから扁桃体は情動的な情報に自動的に反応するような領域であって、そこに注意が入り込む隙はないという考え方があったそうです。
つまり扁桃体の本命はボトムアップ的な情報という考え方です。
もう一つの考え方は扁桃体の本命はトップダウン的な連絡というものです。
トップダウン的な連絡というのは、ことばを変えれば「注意」ということです。
何かを「注意」して見ているときには扁桃体が活動している。何か情動的な視覚刺激を出したとしても、きちんとそこ見ておいてよという事前の「注意」がないときには扁桃体というのは活動しない。
このことから扁桃体の本命というのは「注意」、すなわちトップダウン的な連絡である。
こういった2つの捉え方があったそうです。
こういった結果は実験のやり方によるものも大きいと思うのですが、ほんとうのところは扁桃体の本命はどっちなのでしょうか。
「注意」か「情動」か、どっちが扁桃体の本命なのでしょう。
今日取り上げる論文はこのことについて調べたものです。
実験ではミリ秒単位で脳の活動を調べられる脳磁図を使用して調べたのですが、結論から言うと扁桃体というのは「注意」と「情動」どちらとも本気で付き合っているようです。
これはどういうことかというと、実験で情動的な視覚刺激を被験者に提示すると、そこ注意を向けていようがいまいが、ごく早期の段階で自動的に扁桃体が活動する。
このことからは扁桃体は「情動」的な情報に自動的に反応するといえる。
問題はそこから先で、そこ見ておいてね、と事前に注意を促していた場合には、その「情動」的な反応に後続して、扁桃体が活動する。注意を促していない場合には強い活動が見られない。
簡単に図示すると
前頭前野からの連絡(トップダウン)
↓ (時間的に後)
扁桃体
↑ (時間的に先)
網膜からの情動的情報(ボトムアップ)
で、つまり時間をずらして「情動」と「注意」の両方とうまく付き合っているようです。
【要旨】
「従来行われてきた研究では、扁桃体の注意への関わりは様々な言及がされてきた。一つは情動的な刺激を提示すると注意の有無にかかわらず扁桃体が活動することから、この領域は自動的に脅威情報に反応するというもの、さらにひとつは扁桃体は選択的注意に関わるという立場で、これは注意課題とは関係のない刺激に対しては扁桃体の活動が伴わないことから述べられてきた。今回側頭葉てんかん患者を対象にして頭蓋内電極からの測定を行った。実験では被験者の左側頭葉の扁桃体外側核から直接電極を取り、注意課題に関連させた恐怖表情への反応と注意課題に関連させたい恐怖表情の反応の違いを計測した。結果注意の有無に関わらず、情動刺激に伴う外側扁桃体の活動が認められ、さらに注意を伴う場合には同部位の後続的な活動が認められた。この結果から扁桃体は注意と情動の両方にそれぞれに異なった時間帯で反応することが考えられた。」
コメント
浮気は甲斐性とも言いますが
それでいけば私はどうも甲斐性なしかもしれなくて
これは別に誠実なわけでなく、嘘をつくのがとりわけ下手だという自信があるからで
嘘を上手につける能力があるのならいくらでも悪いことしたい(T_T)
しかし嘘をつくときの脳活動とういのはどんなふうなんだろう。
本当の嘘つきというのはまず自分を上手に騙すところから始めるのかなと思ったりします。
戦後の松下幸之助や本田宗一郎の言動を見聞きしていると(戦後の日本の代表的な経営者)
この人達は本気で嘘をつける能力があった人たちなのかなと考えたり
別に揶揄しているわけではなく、嘘から出た真という言葉もあるわけで
リーダーにはある種、本気で嘘をつく能力が必要なのかなと思ったりします。
本気で嘘をつこう(´・ω・`)
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