私達の脳は自分の顔をどのように認識するのか?
世の中にはいろんな動物がいると思うのですが、ヒトという動物ほど自分の顔を鏡で見る動物はいないのではないかと思います。
しかしながら、この自己顔認知というのはどういった仕組みでなされているのでしょうか。
よほど変な顔をした写真でも、相当にデフォルメをかけた写真でも、大概の場合はまず一発で自分の顔と認識できると思うのですが、こういった自分の顔の認知過程には特別な脳活動が関係しているのでしょうか。
今日取り上げる論文は右半球のミラーニューロンネットワークが自己顔認知に関係していることを示したものです。
ミラー・ニューロンネットワークというのは、名前の通り他者の情報を鏡写しに認知するようなはたらきがあるようです。
これは例えばテレビでボクシングを観戦していると、ついつい自分の身体が動いているようにぴくぴくしたりするようなことがあると思うのですが、他人の運動を見ると自分の運動システムにも響いてしまうような、そういったシステムのようです。
こういったことからこのミラーミラーニューロンネットワークというのは他者理解の文脈でよく取り上げられることが多いのですが、今日取り上げる論文では他者顔よりも自己顔にミラーニューロンネットワークが強く活動することが示されています。
この解釈として、ミラーニューロンネットワークというのは他者の動きを自己としてコピーするはたらきがあるけれど、自分の顔というのは限りなく自己と似ているため容易にコピーしやすく、それゆえミラーニューロンネットワークの活動が高まるのではないかということが述べられています。
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【要旨】
自己認知は霊長類の中でも限られた種にだけ見られるものであり、自己意識との関連の中で調査されてきた。しかしながらその神経学的基盤に関しては明らかにされていない。今回の実験では10名の右利きの被験者を対象に自己顔認識実験を行い、その時の脳活動を機能的MRIを使用して計測を行った。実験では自分の顔と自分と親しい同性の顔をベースにして、コンピュータ画像処理を行い、完全に自分の顔と完全に親しい同性の顔の間に段階的な変形を加えた画像を作成し、徐々に自分の顔から他者の顔に移行していく中で、自分の顔と判断するときにスイッチを押させる課題を行った。結果、自分の顔と認識する時は他者顔認知と比較して右半球の前頭頭頂におけるミラーネットワーク、つまり下頭頂葉、下前頭回、下後頭回に活動の増加が見られ、他人の顔と認識するときにはデフォルトモードネットワーク、つまり内側前頭前野と楔前部に自己顔認知と比較して活動の増加が見られた。これらのことから右前頭頭頂部のミラーネットワークが自己顔認知に関わっていることが考えられた。
コメント
実験では自分の顔を徐々に他人の顔に変形させていって(0%自己→100%他者)、どのへんまでが自己と認知できるかで評価させたようです。
上図参考URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15808992
この研究の解釈では自分というのが最も身近な他人という、なんともややこしい話になるけれども、でもちょっと分かるような気がする。
「鏡の中の自分が好き」という自己愛はある意味、他者愛の文脈で理解できるのかなと思ったりします。
「自己」ってなんなのでしょう(´・ω・`)