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視床下核と情動発現

世の中にはアンガーマネジメントというものがあるそうです。

直訳すれば怒りの管理ということになると思うのですが、これは意識的に情動を調整して、うまく社会生活を送れるようにするためのテクニックだそうです。

しかしながら情動というのはそんな絵に描いたように調整の効くものなのでしょうか?

今日取り上げる論文は情動がどのように発動するかについて皮質と皮質下のネットワークを行ったものです。

脳には見ることや、聴くこと、触覚すること、いろんなことに特化した領域があるのですが、最終的には前頭前野に送られるようです。

前頭前野もいろいろ広いのですが、中でも背内側皮質といわれる領域がもっとも情報が集約される領域だそうです。

いろんな情報は最終的に前頭前野の背内側皮質に集約されて、情動の発現に大事な役割を持つ視床下核に連絡するそうです。

その間にも皮質下のいくつかの領域を通るのですが、これを模式的にかくと

   →→→中脳周囲灰白質→
   ↑          ↓
背内側前頭前野    視床下核
   ↓          ↑
   →→→→視床→→→→→

ということになり、情動発現に関連するネットワークは大変込み入っているのですが、このネットワークがいちばんの肝なのではないかということが述べられています。

【要旨】
「今回162の神経画像研究を対象にメタアナリシスを行い、情動処理に関連する脳活動について調べた。様々な情動に一貫して関連して活動する皮質領域は特定の領域に限定されており、それは内側、眼窩部、下外側の前頭葉に見られた。また情動に関連して活動する皮質下の領域としては扁桃体、腹側線条体、視床、視床下核、中脳灰白質が挙げられた。また活動領域を機能的にグループ分けを行うと6領域に分けられた。これらの6領域は機能的にネットワークを構成していた。さらに解析を進めると背内側前頭前野と中脳灰白質、視床下核の関係が中核的な役割を果たしていることが示された。このことから背内側前頭前野が情動の中脳灰白質、視床下核といった皮質下における情動処理の中核的な領域と結びついていること、またその意味で皮質における情動処理では背内側前頭前野が最も重要であることが考えられた。」

参考URL:Functional grouping and cortical-subcortical interactions in emotion: a meta-analysis of neuroimaging studies.



コメント

メリカ生まれのアンガーマネジメントによると、これをマスターすると年収が二倍になり、寿命が7年伸びるということだが、年収二倍にならなくても、寿命が伸びなくても、怒りたいように怒れたほうが幸せかなという気もします(T_T)

それはさておき、前頭前野の話と絡めてよく出てくる頭に杭が突き刺さって、社会性を失ったとされるフィニアス・ゲージですが

その後の検証によると、ハチャメチャなのは受傷後数年であり、その後は社会性を取り戻し、わりに落ち着いていたのではないかという話もあるそうです。

思い違いでなければ、フィニアス・ゲージが損傷したのは前頭眼窩野で、

もしこの論文が言うように情動コントロールの肝が前頭背内側皮質だったら、

この部位が温存されていたおかげで、その後の回復もあったのかななどと思ったのですが、どうなんでしょう。

怒りのコントロールも大事だけれども、一番大事なのは怒るような状況に身を晒さないための戦略的な行動なのかなと思ったり

情動を抑えるよりも、情動を暴走させないように自らの身を処する能力かなとおもったり

ストレス解消技術よりもストレスを作らない技術が大事かなと思います。

 

 

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