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本番と予行演習の本質的な違いと脳の中の認知システム

研究発表の予行演習なんかを見ていると、世の中には本番に強い人と本番に弱い人の二種類がいると思います。

しかし本番と非本番の違いというのは何でしょう。

一つは観客がいるかいないかということではないかと思います。

観客がいることで普段だったら普通にできることも、いっぱいいっぱいになってできなくなってしまう。これはどういうわけでしょう。

今日取り上げる論文は感情的な表情が注意課題に与える影響について調べたものです。

結果から言うと、情動的な表情刺激というのは認知的な情報処理の邪魔をするということです。

これは例を上げればニュートラルな表情の顔が並んでいる中で男の人の顔を選んでくださいという課題であれば普通にできるのに、ニュートラルな顔の中に恐怖表情なんかを混ぜ込んでおくと、そっちに気を取られて課題の成績が落ちるというものです。

こういったことから情動的な表情刺激というのは時として認知処理を阻害しうるということが述べられています。

発表本番で、頭が回らなくなるのは本来認知処理に回すはずの頭のキャパが,目の前の表情情報の処理にとられるのも、どこか関係しているのかななどと考えました。



【要旨】

「今回の研究では情動的な表情刺激が、情動情報とは無関係な刺激を検出する課題で注意を引き付けることを示す。実験では被験者は画面に提示された複数の顔の中から男性(もしくは女性)を選択し、その顔の傾き方向を報告する課題を行った。正解以外の選択肢の中に情動的な表情が含まれていた場合、被験者の反応が低下する傾向が見られた。この結果から情動的な表情は課題の求める性質とは独立して注意を引き付けることが示された。」

参考URL:Attentional capture by irrelevant emotional distractor faces.

コメント

その意味では観客をかぼちゃか何かだと思いなさいというアドバイスは正しいんだろうなと思います。顔情報が認知処理のじゃまをするんだったら、最初から顔じゃないということにしておけばいい。

サングラスをかけるような人が、時にシャイだったりするのは、自分の目(表情)を見せないのと同時に、他人の表情をしっかり見ることに対する恐怖心もあるのかななどと思ったりします。

ヒトほど表情情報に敏感な動物もきっとおらず

これはヒト科が身内殺しがもっともさかんな動物だといいう事実とも関係があるのかなと思ったりします。

時に「人間らしさ」ってなんなんだろうと思ったりです。仲間同士仲良くっていうのであれば、きっと動物のほうがよっぽどヒューマニティにあふれている。身内でこんなに殺しあう動物はヒトを除いてそうそういない。

同じヒト科同士仲良くやっていきたいものです。

 

 

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