
感情と脳の関係とは?
今日取り上げる論文は、怒りや恐れ、幸せや悲しみに対して、脳がどのような活動をしているかについて調べたものです。
脳と感情の関係についてはいろいろなモデルが提示されているようです。
モデル①「右半球仮説」
感情を司るとは右脳だというものなのですが、これはメタアナリシスを行った結果、どうやら違うらしいです。
モデル②「感情の辺縁系仮説」
大脳新皮質の下にある辺縁系が感情を司るというものなのですが、実際の感情と脳活動を照らし合わせると、新皮質も含めた大脳全体に分散的な活動が見られ、これもどうやら違うようです。
モデル③「感情の二元処理仮説」
もう一つは肯定的な感情は左脳、否定的な感情は右脳によって処理されるというものですが、実際には左右差は見られず、これもどうやら違うらしいです。
モデル④「感情の情動プログラム仮説」
これは悲しみや喜び、恐怖や嫌悪に対応するそれぞれの脳領域があるのではないかという仮説なのですが、これは部分的には支持される結果となったようです。
つまり恐怖には扁桃体、嫌悪には島皮質と淡蒼球、怒りには外側前頭眼窩野というふうに、様々な感情に対応する脳領域があるそうです。しかしながら幸せと悲哀感の脳活動には有意な違いは見られなかったそうです。
総じて、脳には様々な感情にそれぞれに対応する分散的なシステムがあるのではないかということが述べられています。
【要旨】
「機能的神経画像を用いることで、ヒトの感情についての多くの知見が蓄積されてきた。しかしながらこれらの知見は個々の実験から引き出されたものであり、これらの知見から引き出される結論というものも限局されたものにならざるをえない。今回、過去に行われた神経画像研究についてメタアナリシスを行い、ヒトの感情について示された様々な脳と感情の関係モデルについて検討を行った。結果、個々の感情に対応した脳のシステムがあるという「情動プログラム」説が部分的に指示された。恐怖、嫌悪、怒りのそれぞれに対応した脳の分散的な活動があることが示された。これらの感情は、扁桃体や島皮質、淡蒼球や外側前頭眼窩野という、それぞれの感情と結びついた特定の領域が損傷することで変化しうることが示された。幸せと悲哀と関係する脳領域に関しては違いが認められなかった。」
参考URL:Functional neuroanatomy of emotions: a meta-analysis.
コメント
この論文を読んでいて、幸せと悲哀感に対応する脳領域に有意な違いが見られなかったというのが面白かったです。
データの不足か解析方法の問題で違いを見つけられなかったのかもしれませんが、この幸せと悲哀の2つの活動が似ているとしたら
日本人の演歌、古代ギリシアから続く悲劇、あるいは黒人の哀愁を歌ったブルースというものが人の心を捉えるのも
哀しみというのは幸せと同様、快の感情に繋がるなにかがあるのかなと思いました。
そんな旦那ともう別れたらいいのにと思いつつ離れられない苦労性の人も
切なさや悲しさから何らかの快感情という報酬を得ているのかなと思ったり
自己憐憫は中毒になるというのもその辺かなと思ったり
いろいろだなと思うのですが、演歌もブルースもない世界というのもまた味気ないなと思ったりします(-_-;)
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