
扁桃体と大脳皮質の関係とは?
昨日までミラーニューロンについての論文を取り上げてきましたが、今日から感情と知覚の関係をテーマに様々な論文を取り上げていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
今日取り上げる論文は、今回のテーマの基本論文になるもので、扁桃体が知覚処理に与える影響について調べたものです。
結論から述べると
① 扁桃体は知覚情報処理のハブ(重要な中継点)になっている。
② 扁桃体は感覚野や前頭皮質から入力を受け、それを広範な領域に投射することで知覚処理過程を調整している。
というものです。
くわしくこの図を見ていただければわかりやすいと思います。
図の中の丸いのが扁桃体とその諸領域で、NBが基底核、OFC/VMPFCが前頭葉の情動関連領域となっています。
【要旨】
「状況に応じて柔軟かつ適切に行動するためには周囲の情報を適切に取捨選択する必要がある。過去10年の研究によって、感情の処理や選択的な注意、そして感情と注意の相互作用がどのようになされているか、環境情報の取捨選択を行う上で必要な機能の神経基盤についての知見が集積しつつある。この神経基盤の重要な中継点となっているのが扁桃体である。この扁桃体は環境の中から感情的に訴求する刺激を検出したり、またその情報を様々な領域に投射する機能を持っている。扁桃体を中心とするこのシステムは知覚や運動、そして記憶処理過程までも調整し、状況に応じた適切な行動を引きおこす機能を持っている。本稿ではこのシステムについて詳しく説明を行い、特に恐怖と関連でこれを論じる。また内生的な感情が状況に伴う情動反応を強めると考えるが、扁桃体や前頭前野の働きによってこの反応が調整されうると考える。この調整機構が変性することで不安障害や恐怖症といった精神病理学的な症状が出現すると考えられる。注意の選択や覚醒度といったものは、上記に示す様々な応答感度調整機構によって調整されるものであると考える。」
コメント
感情と知覚の影響で、喜びとか悲しみとか広範な感情が知覚に与える影響だと思って読んでみたのですが、どうやら不安や恐怖と関連する扁桃体に的を絞ったもののようです。
片麻痺の患者さんに「大丈夫、大丈夫、こわくないから」といって立たせたり歩かせたりする光景はよくあるとおもうのですが
普通一般に考えても、怖いものは怖いですよね。怖さというのは理由を超えている。
それはさておき、この扁桃体を中心とするネットワークが知覚にどのような影響を与えるか、いろいろ調べてみたいと思います。大分長いシリーズになると思いますがよろしくお願いします。