
「ヒトとサルでは楔前部の本質的な機能的構造を共有する」
ヒトの脳はいろんなシステムが集まって出来ていているのですが、近年注目されているものにデフォルトモードネットワークというものがあります。
このデフォルトモードネットワークというのは何をやっているのかよくわからないところがあって、今わかっているところでは
・あてもなくぼんやりした思考に関係している
・未来の行動をシミュレーションするときに働いている
・他人が何を考えているかを想像している時に働いている
・仕事をしない時には活動が低下し、仕事じゃない時ほど活発に活動する
・うっかりミスと関係する
「気付き」と関係する
・自分が何者かというアイデンティティに関わって活動している
などなどいろいろです。
こんなふうにいまいち掴み所がないので、その時々で「ぼんやりシステム」、「わたしシステム」、「宴会部長システム」、「シミュレーションシステム」などなど勝手に名前をつけてきたのですが、こういったいろいろが現在わかっているデフォルトモードネットワークの働きになります。
今日取り上げる論文は今までデフォルトモードネットワークの一部と言われてきたある領域が実はよくよく調べてみるとデフォルトモードネットワークではないのではないかということを示したものです。
約3ヶ月にわたって「心の理解におけるデフォルトモードネットワークとミラーニューロンネットワークの相互作用」というマニアックなテーマにお付き合い頂きありがとうございました。
現在の研究テーマとして身体表現の脳機能というものを考えており、その先行研究を明日からまた取り上げていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
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【要旨】
マカクザルを対象にした先行研究から楔前部は複数の解領域に分けられることが示されている。今回ヒトとサルを対象に機能的MRIを使用した安静時の機能的連結構造を調査し、ヒトにおける楔前部がサルと同様に複数の脳領域に分けられるかについて検討を行った。結果、ヒトの楔前部は前部、中部、後部の3領域に分けられ、前部は上部頭頂葉、中心溝周辺皮質、運動野と連結しており運動に関わるネットワークを構成し、中部は背外側前頭前野、背内側前頭前野、外側下頭頂葉と連結しており認知に関わるネットワークを構成し、後部は隣接した視覚関連領域と連結していることが示された。従来楔前部とひとつのユニットのように扱われた後帯状皮質は内側側頭葉の情動関連領域、背側および腹側の内側前頭前野、外側下頭頂葉後部、外側側頭葉と連結しており、楔前部は後帯状皮質の連結パターンとは大きく異なっていることが示された。
参考URL :Precuneus shares intrinsic functional architecture in humans and monkeys.
コメント
要旨に書いてあるように楔前部というのは後帯状皮質/楔前部でデフォルトモードネットワークの後ろの方の大事なユニットと考えられてきたのですが、その接続パターンをよくよく調べてみるとデフォルトモードネットワークにいれるのはどうかなというようなことが書かれています。詳しくは要旨を御覧くださいm(_ _)m
明日から新しいテーマで、ジェスチャー(身振り、手振り)の脳機能について進めていきたいと思います。時に脱線しながらになると思いますが、どうぞよろしくお願いします。