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幼少期の扁桃体損傷と成人期の損傷では経過はどう違うのか?

蜘蛛やヘビ、死体やエロティックな画像、こんなものについつい目がいってしまうのは扁桃体の働きがあるからだと言われています。

死ぬことや生きること、生存に直結するような情報というのは扁桃体が取り漏らさずにすぐに拾い上げ、個体が迅速に対応できるように調整する。こういった迅速な情報処理に扁桃体が働いていると言われています。

こういった扁桃体の働きの論拠となっているのが、成人になってから扁桃体を損傷したある患者を対象にした実験だそうですが、今日取り上げる論文はこの「扁桃体は迅速な情動刺激の検出に必要」という考え方に異を唱えるものです。

実験ではまだ子供の頃に両側の扁桃体を損傷した患者を対象に行なったのですが、情動刺激の検出には健常者と大きな違いがなかったそうです。

つまり扁桃体があってもなくても情動刺激の検出能力はあんまり変わらない。

このことから情動刺激の検出に扁桃体は必要不可欠というわけではないのではないか、

また先行研究と今回の研究でこのような差がでたのは先行研究が成人してから扁桃体を損傷していたのに対し、今回の研究では幼少期に扁桃体を損傷しており、この若い時期の損傷では視床枕など他の領域によって扁桃体の機能が代償されるからではないかということが述べられています。

【要旨】
「扁桃体は特徴的な視覚刺激が優先的に処理される上で重要な役割を果たすといわれている。この考えは、成人期に両側の扁桃体を損傷した患者を対象にした一症例の研究にもとづいたものである。本研究ではこの一症例の研究に基づいた方法で、両側の扁桃体を損傷した二症例を対象に実験を行い、扁桃体を損傷していても特徴的な視覚刺激の検出能力に変化がなかったことを報告する。この結果は扁桃体が特徴的な視覚刺激の検出に必要だという考えに異議を唱えるものであり、人生の早期で扁桃体を損傷した場合には扁桃体以外の他の領域が代償することを示唆するものである。われわれは扁桃体が機能しない場合、視床枕や皮質視覚領域が扁桃体の機能を代償するものと考える。」

参考URL:Automatic relevance detection in the absence of a functional amygdala.



 

コメント

視床枕は網膜から入った情報を扁桃体につなぐところなのですがこの図がわかりやすいと思います。

この図とにらめっこしていると別に扁桃体なしでもやっていけそうな気になってくる。

pulvinar:視床枕 SC:上丘 retina:網膜 amygdala:扁桃体

上図引用URL:

若いうちに扁桃体が損傷されると、代償的なシステムが再構成されるということですが、脳にしても人生にしても若いうちの方が再構成しやすいのかなと思いました。

失敗は若いうちのほうがいいというのはシステム論的に考えてもそうなのかなと思いました。

「やり直しが効く」というのは「システムが再構成されやすい」という言葉に置き換えられるのかなと思います。

 

 

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