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「エピソード記憶の再生から自己参照処理の輪郭を描く:そのネットワークの共通点と相違点」

西洋のピノキオの例でもないのですが、時の話題に登るものとして虚言癖というものがあります。

これはあることないこと手当たり次第に吹聴して、言っている本人もそれが嘘だか本当だかわからなくなったりするような症状のようですが、こういった症状は脳科学的にどのように考えることが出来るのでしょうか。

脳というのははいろんな記憶を処理することが出来るのですが、その記憶というのはいろんなふうに分けることができます。

ちょっと電話番号を覚えておくだけの短期記憶、電話をどうかけるかといった手続き記憶、この人とは電話で話したことがあるなというエピソード記憶などなどいろいろなのですが、今日取り上げる論文はエピソード記憶について詳しく調べたものです。

脳の中にはいろんなネットワークがあるのですが、その中でも自分感覚に関わる「わたし」システムというようなものがあります。

人生というのはいろんなエピソードに彩られているように、この自分感覚の成り立ちにはエピソード記憶が大きく関わっています。それゆえエピソード記憶の再生に際しては脳の中の「わたし」システムが活動するとされてきたのですが、今日の論文ではこのことを詳しく調べたものです。

結果を述べると「わたし」そのものを認識している時とエピソード記憶を思い抱いしている時では同じ「わたし」システムでも異なる部分が働いていること、そしてその所々で重複していることが示されています。

自分が何者か、何をしてきたのかという感覚が成り立つにはエピソード記憶が大事だと思うのですが、これは自分そのものの認知処理とは異なる方法で処理されており、世に言う虚言癖というのは「わたし」システムの中でもエピソード記憶に関わるネットワークに問題があるんだろうかなどと考えました。

【要旨】

自己認知は複雑な現象であり、その神経基盤が具体的にどのようなものであるかについての研究は困難なものとなっている。この自己認知と深く結びついたものとしてエピソード記憶というものがあり、本研究ではこのエピソード記憶と自己認知過程の相違点について調査を行った。実験では標準的な方法を用いて自己認知課題とエピソード記憶課題を行ってもらい、その時の脳活動を機能的MRIで測定を行った。自己認知課題では後帯状皮質/前楔前部、内側前頭前野、下頭頂葉下部領域に活動の増加が認められ、エピソード記憶課題では後楔前部、右前部前頭前野、下頭頂葉上部領域に活動の増加を認めた。重複する領域としては楔前部と下頭頂葉のそれぞれの移行部に見受けられたが前頭前野においては重複は見られなかった。私達のデータは内側部および外側部の頭頂葉に自己認知課題とエピソード記憶課題で共通した活動を認めたが以下の3点の相違点が見られた。

(1)内側頭頂葉(楔前部)の前部と後部の違い

(2)前頭前野における内側領域と前外側領域の違い

(3)外側頭頂葉における上部領域と下部領域の違い

参考URL:Delineating self-referential processing from episodic memory retrieval: common and dissociable networks.

コメント

考えただけで根拠はないのですが・・・(-_-;)

それにしても虚言癖の人のあり様を見聞きしていると部屋を形付けられなかったり落ち着きがなかったりというADHDのような症状があったりで、なにかしら「わたし」システム(デフォルトモードネットワーク)の障害で考えられないのかなとは思います。

何かしらコメントいただけたらありがたいですm(_ _)m

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