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扁桃体と前頭眼窩野の関係とは?

本番に強い人、弱い人というのがいます。

肝が座ってるのかどうか、本番になっても全然パフォーマンスが落ちない。

あるいは普段上手にできても人前だと緊張してしまって大事なときに上手にできない。

同じ運動プログラムが頭にあるはずなのに、気分によってうまく出来たり出来なかったり。

なぜこのような事が起こるのでしょうか。

ここでもやはり大事なのは扁桃体なようです。

繰り返し取り上げてきたように扁桃体というのは、情動的な情報を受けて脳のあちこちにフィードバックをかけます。

それが

視覚野⇆扁桃体

で視覚野にフィードバックをかけて、危険信号をもっと注目するように仕向けたり

あるいは

視覚野⇆扁桃体⇆自律神経

で自律神経にフィードバックをかけて心臓をドキドキバクバクさせていつでも逃げ出す体制を整えたり

そんなことをして個体の生存確率を上げるように頑張る、そんな役割があるのだと思います。

今日取り上げる論文はこの扁桃体と運動機能の関係について調べたものです。

ビビる、とか、足がすくむ、だとか、いうように怖い時には体がすくんで思うように動いていくれません。

情動と関連して身体が動かなくなる。

これはどういう仕組でできているのでしょうか。

いつものように概念図で示すと、視覚を例に取れば

視覚⇆扁桃体⇆外側前頭眼窩野⇆運動系

の回路があるようです。

前頭眼窩野というのは前頭前野の底の方にある領域なのですが、

ここは補足運動野などの高次運動領域と結びついていて、

扁桃体→前頭眼窩野→運動系

の流れで情動→運動の回路を作っているようです。

【要旨】

「潜在的な危険を感じた時には何かを実行している時でも動きが急に止まることがある。しかしながらこの情動と運動抑制の関係については不明点が多く残されている。本研究では信号停止課題を情動的な表情の提示を行う中で行い、そのパフォーマンスと脳活動について調べた。結果、情動的な表情を見せた時にはパフォーマンスの低下が見られた。脳活動では情動的な表情を見せた時には扁桃体基底部と扁桃体レンズ核下部からなる辺縁系と補足運動野の活動に変化が見られた。さらに状況に合わせ運動を抑制できた時には外側前頭眼窩野の活動増大が見られた。この活動の変化は自発的な運動抑制に関わるとされている下前頭回の活動とは関連を持たなかった。また情動的な表情を見ることで運動を適切に抑制できなかった時には一次運動野の活動低下が見られた。これらのことから扁桃体は情動的な刺激を感知して、防御的な運動実行(身体をすくめる、防御反応をとる)に関わるだけではなく、実行中の運動にも影響をあたえることが考えられた。」

参考URL:Fear and stop: a role for the amygdala in motor inhibition by emotional signals.

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コメント

前いた病院で尊敬できる上司がいたのですが、

やっている内容は相当ハードできついリハビリで、運動にしてもできるかできないか、患者さんにしてみれば大分怖そうなレベルのところを狙っていく。

ただリハビリ中は常に笑顔でテンション高く、楽しい雰囲気を人工的につくりだして、そこで難しい課題を行なっていたのですが

たしかに恐怖心がないほうが運動パフォーマンスが上がるし、そうやってリハビリしたほうが治りも早い。

戦略的に褒める、楽しませるというのも大事なんだろうなと思います。

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