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「利他主義の中の利他主義:共感の進化について」

ペットを飼うという行為は古代エジプトから見られ、21世紀のいまでも世界各地、貧富を問わずあちこちで見られる現象だと思うのですが、ヒトはなぜペットを飼うのでしょうか。

ペットを飼っている人は決まって心が通じあっていることを強調しますが、果たしてペットは飼い主の心がわかっているのでしょうか。飼い主とペットの心が共感しあうというのは本当にありえるのでしょうか。

今日取り上げる論文は共感能力の進化について述べたものです。

人は共感する生き物です。

辛そうな人がいれば自分も辛い気分になり、痛みにのたうち回る人がいれば自分まで苦しくなってしまう。

こういった能力があるゆえ、人は互いに助け合い、この助け合いがあるゆえ社会というのがうまく回っていると思うのですが、この論文によるとこの共感能力というのはヒト科の専売特許ではないようです。

進化的に見るとサルやゴリラといったヒト科に近い動物はもとより、イヌや鳥といった進化的は随分遠縁に当たる動物も原初的な共感能力を持っていることが説明されています。

こういった共感能力のベースとして他者の感覚を自分の感覚に置き換えるような能力があるそうですが、ヒト科においてはこの感情の写しこみ能力が高度に発達しており、それゆえ他人の視点で物を見たり、あるいは他者の真似をしたりといったことが極めて得意なのではないかということが述べられています。

【要約】
進化論的立場では利他的な行為が発達したのは、それは利他的行動を取る個体に利益が戻ってくるためであると想定している。そして利他的行為が自分の利益になるという認識ができるためにはその動物は自意識をもつ必要がある。共感は直接的な利他主義を考える上で重要な因子であると思われる。これは他者の痛みや苦しみに直接反応するようなものである。様々な研究からこの原初的な共感作用は哺乳類や鳥類といった進化の段階まで遡れる起源の古いものであることが示されている。この共感においては、他の個体の感情を知覚することで自動的に観察者の同じ情動が惹起される。様々な研究結果から、この他者との情動のマッチングシステムが進化することで他者を気にかけたり、他者の視点で物を見るという能力が現れたと考える。共感によって引き起こされる利他主義は自己や他者の幸せが元になっていると考える。この共感メカニズムによるダイナミクスから血縁主義や互恵的利他主義の説明ができると思われる。

参考URL:Putting the altruism back into altruism: the evolution of empathy.

コメント

ということはイヌも共感能力があるということなんだろうか。

ちなみにこの共感機能というのは自分に近い個体により強く反応するそうです。

これは自分とよく似た顔形だったり、あるいは付き合いが長くて親しみ感が強かったり、そういったことでこの共感機能が強くなったり弱くなったりするそうなのですが

その昔職場での飲み会が今よりもずっと多かった時代には

あれはあれで距離を縮めて、同族的な感情を醸し出し、結果共感しあいやすくなり、さらには組織として相互協力的な雰囲気が醸されるという効用があったのかなと思いました。

個人的には独り呑みが好きなのですが・・(-_-;)

あれはあれできっといい時代だったんだろうなと思います。

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