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「社会的な相互作用を観察することによって背内側前頭前野と内側頭頂葉のBOLDfMRIシグナルが安静時と比較して増加する」

「空気を読む」という言葉がありますが、私達人間は状況把握の達人です。

下の画像は「けんかはやめて」の検索で引っかかってきたものですが、言葉も音声もないこんな画像でもなんとなく状況をつかめるのはどういうわけでしょうか。

上図参考URL:

今日取り上げる論文は空気を読んだり状況把握をしている時の脳活動について調べたものです。

結論を述べると状況理解に際して二つのネットワークが働いているのではないかということが説明されています。

一つはミラーニューロンシステムといわれるもので、これは相手の動きを視覚や聴覚を通じて自分の脳に取り込む働きがあるものです。モノマネや模倣といった機能に大きく関係するとも言われています。

もう一つはデフォルトネットワークと呼ばれるもので、これはある妄想全般に関わるものです。未来の自分を想像したり、過去のことを思い出したり、他人の心を勘ぐったりしている時にこのネットワークが働くことが報告されており、つまりは脳内シミュレーション全般に働くものではないかということが言われています。

状況把握をする時というのは、まず第一段階でミラーニューロンシステムが駆動し相手の運動情報を自分の脳内にとりこみ、第二段階としてその取り込んだ情報を基にデフォルトネットワークを駆動してシミュレーションを立ち上げ、この流れで目の前の状況把握を行っているのではないかということが述べられています。

簡単に図示すると

ミラーニューロンシステム(運動情報の取り込み)

デフォルトネットワーク(運動情報を元にしたシミュレーションの実行)

という流れになっているのではないかということが述べられています。

【要旨】

脳には何もしていない時に活動して、何かの課題を行っている時には低下する領域があることが知られている。内側頭頂葉と背内側前頭前野を含むこれらの領域はヒトの脳の“標準状態”を支えるものではないかということが多くの研究によって示されてきた・また実験室で受動的な視覚刺激を提示した時にはこれらの領域には安静時と比較しても変化が見られなかった。今回の研究では被験者に日常場面での社会的な相互作用を含む動画と含まない動画を呈示し、その時の脳活動について機能的MRIを使用して計測を行った。従来の受動的な画像提示研究と異なり、社会的相互作用を含む動画を示した場合には安静時と比較して内側頭頂葉(楔前部)と背内側前頭前野に活動量の増加が認められた。私達が知るかぎり、本研究は内側前頭葉と背内側前頭前野が共に活動を増大させたことを示したはじめての研究である。この標準状態に関与する脳領域は下前頭葉や側頭葉上部領域、紡錘状回の活動と結びついて社会的な認知に重要な役割を果たすものであると考える。

参考URL:

はじめて読んだつもりがこれも以前取り上げたことがあったようです(-_-;)

このデフォルトネットワークというのは嬉しかったり悲しかったり元気がなかったりという情動系のネットワークとも結び付きが強く

鬱々してる時、元気が無い時というのは時に被害妄想的な状況理解をしてしまいますが、

こんな時はシミュレーションに働くデフォルトネットワークがネガティブな情動に引っ張られ、ミラーニューロンシステムから送られた情報を適切に扱えないためかななどということを考えました。

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