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自己認識と脳領域、言葉の関係とは

私達が住む世界は無数のアイコンに満ちあふれています。

パソコンの画面をひらけば様々なアイコンが並んでいますが、外を歩けばハンバーガー屋のアイコンが飛び込んでくるし、雑誌をひらけばブランド品のアイコンが飛び込んできます。

こんなふうに日常生活はいろんなアイコンにあふれていると思うのですが、考えてみれば言葉と言うのは一番ポピュラーなアイコンと考えることが出来ないでしょうか。

たとえば「リンゴ」という言葉をみると、リンゴの赤さや噛み締めた時のほとばしる果汁、独特の甘酸っぱさが喚起されるかもしれないし、「お城」という言葉を見ると、その前に立った時の建物の大きさや広さ、圧倒感というものが喚起されるかもしれない。

つまり言葉というものはそれ自体が強力なアイコンではないかと思うのです。

コピーライティングというのは少ない言葉を並べて人々に強い訴求性を持つメッセージを伝える仕事だと思うのですが、こういったことが可能なのも言葉、単語というものが本質的にアイコン的な性質を持っているからではないでしょうか。

今日取り上げる論文は自己認知に関わる脳活動について調べたものです。

具体的には自分の顔を認識している時、脳のどの辺が活動しているかについて調べたものですが、面白いことにリンゴやお城といった語彙処理に関わる部分が自分の顔を認識している時強く活動したそうです。

自分の顔と言葉の処理というとまるで関係がないような気がしますが、アイコンの処理という観点で見れば通じるものがあるのではないかということが述べられています。

【要約】
視覚による自己認識には特別な脳の機構が関与していることが様々な研究から示されている。しかしながら解剖学的にどのようなものであるかについては未だ明確にされていない。今回事象関連機能的MRIを使用して自分の顔を見ている時の脳活動について調査を行った。実験では自分の顔を見せている時、馴染みのない他者の顔を見せている時、よく知っている知人の顔を見せている時、関係の薄い知人の顔を見せている時の4条件で脳活動を比較した。自分の顔を見ている時と馴染みのない他者を見ている時を比較すると、右側頭後頭頭頂接合部と前頭弁蓋部、そして左紡錘状回に自分の顔に関連した活動が認められた。これとは対照的に知人の顔を見ている時に活動する両半球の側頭頭頂接合部と左前側頭皮質は自分の顔を見ている時には活動増加が認められなかった。これらの結果から知人の顔を認識する時と自分の顔を認識している時には部分的に異なるネットワークが活動していることが考えられた。右の側頭-頭頂-後頭接合部と前頭弁蓋部の活動は動きと動作の関連性に関わるネットワークを構成していることが先行研究からは示されている。自己顔認知に関連する左紡錘状回の活動は語彙処理過程と関係することが考えられた。

参考URL:Cortical mechanisms of visual self-recognition.

コメント
自分の顔というのは人生の相当はじめの頃に獲得する結構大事なアイコン(記号)なんだろう。

少し詳しい話をすると

紡錘状回というのは意味処理に関わる腹側視覚経路の下流に位置していて

側頭極もやはり意味処理に関わる腹側視覚経路の下流に位置していて、意味処理、意味認知に関わるとされているのですが、紡錘状回のほうがより普遍性が強い対象に反応し、側頭極のほうは個別性が強い対象に反応する傾向があるそうです。

生まれてこの方いろんな記号(アイコン)を覚えていくんだけど

一番大事なのは記号は記号でしかないという理解なのかなと思ったりします。

 

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