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新奇な事象と大脳基底核

今日取り上げる論文は視覚的注意についてのものです。

普段生活していても、新奇なもの、驚きを伴うものというのは目につきやすいし、記憶にも残りやすいと思うのですが、今日取り上げる論文では、これがどういう神経メカニズムでなされているかについて説明されています。

結論から述べると

①脳には新奇な事象の検出に関わる広範なネットワークが存在する。これは主に前頭葉と頭頂葉、側頭葉内側部を中心に構成される。
②新奇な事象に際して、まず情動に関わる領域が活動し、これを受け基底核の一部が活動する。
③基底核の一部(マイネルト基底核)は神経伝達物質を通じて、①の新奇事象検出に関わるネットワークを賦活する。

というものです。

この図がうまくまとまっていてわかり易かったです。

上図参考URL:

図のAchはアセチルコリン、NAはノルアドレナリン
新奇な事象の検出に関わる領域として、赤色が前頭眼窩野、青色が前頭葉外側部、茶色が頭頂葉、深緑が嗅内皮質、嗅周皮質、紫色が海馬

遺伝子検査のジーンライフ<Genesis2.0>

【要旨】

「激しく変化する環境の中で生き延びるためには、新奇な事象を見出し、それに対応していく能力が求められる。過去40年の研究によって、脳がいかにしてこの新奇な事象に対応しているかについてのメカニズムが明らかになりつつある。本稿ではこのメカニズムについての総説を行い、新奇な事象の検出に関わる脳の活動が、細胞レベルで、シナプスレベルで、またネットワークレベルでどのように起こっているか、また検出された新奇な事象がいかに記憶に留められていくかについて仮説的に説明を行う。」

参考URL:Neural mechanisms for detecting and remembering novel events.

コメント

新奇なもの、驚きを伴うものは注意を引きやすく記憶にも残りやすいというのは、すぐにでも仕事に応用できそうな気がします。

学習には新しさ、驚きというものが必要というのは、先日の先生のお話でも在りましたが、この論文を読んでやはり毎日同じ事をしているだけではいけないなと思いました。

しかしこの論文の中で、神経伝達物質を介しての新奇なものへの反応は、生物学的にずいぶん古いものだという記載を見て
これは新奇なものに対応して反応しなければ生き延びられないし、それは恐怖や不安を介して、攻撃や逃避につながっていくものだと思うのですが

なにか新しいものをやろう、ルールを変えようを提唱すると、大概の場合は拒否や無視、攻撃されるというのは、ヒトが生物である以上、やっぱりしょうがないのかなと思ったりします。

ある経済人の回顧録で「リーダーはヒトの半歩先を示せ。二歩先では他人は理解できず、一歩先でもヒトは行動に移せない」のようなことを書いてありましたが、生物学的にもそうなのかななどと思いました。
この半歩先というのは、先日先生が言われていた近接領域のことをいうのかななどとも思ったのですが

患者さんに接するように、職場の中でも動ければなあなどと思いました。

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