あなたの脳の妄想機能はどのように実装されているのか?
ヒトにできてコンピュータに出来ないものに妄想があるのではないかと思います。
妄想というのはどういうことかというと、これはまだ見たことも聞いたこともないことを頭のなかで勝手に作り上げてしまうことです。
ではどうやってそれを作るかというと、頭のなかにある手持ちの材料(記憶)だけで、それをうまい具合にコラージュして、面白おかしく時に哀しく、新規の情報、つまり妄想をつくり上げると思うのですが、このややこしい仕事を脳はどのへんでやってのけているのでしょうか。
この論文によると脳の内側面の領域で構成されるデフォルトモードネットワークと外側面領域で構成されるミラーニューロンシステムが協調してこの妄想機能が立ち上がるのではないかということが書かれています。
正確にいうと妄想機能ではなく“シミュレーション”機能ということですが、このシミュレーション機能があるから相手の心を理解できたり、あるいは未来の自分の状態について考えることができるのではないかということが述べられています。
近年の自己表象に関する研究によって、自己とは私的なあるいは社会的な行動の重心点となるべきものであるということが示されてきた。
本稿では内側の側頭-頭頂皮質からなるデフォルトモードネットワークと外側の前頭-頭頂皮質からなるミラーニューロンシステムについてしらべた神経画像研究を取り上げる。この二つのシステムが相互作用を起こすことで脳の中でシミュレーションが立ち上げられ、自己表象というものが現れると考える。
シミュレーションというのは既存の情報を組み合わせることで未知の状態を理解しようとする試みであるが、これは時間、空間、物理的、社会的な自己関連情報を組み上げることで可能になるものであると考える。
近年蓄積される多くのエビデンスからこのシミュレーション過程は自己や他者の身体的、精神的理解に用いられることが示唆されている。
参考URL:Searching for an integrated self-representation
コメント
少し詳しい話をすると
脳の中には上記のシミュレーション機能に対応するようなシステムが有り、これはデフォルトモードネットワークと言われています。
表面からは見えない脳の内奥の領域で構成されており、主な領域は内側前頭前野と後帯状皮質になります。
人の心を読み取るといった時は、これに視覚情報を運動情報に変換するミラーニューロンシステムが接続して、目に見えた他人の様子をデフォルトモードネットワークのシミュレーションシステムに放り込む、そういった繋がりがあるようです。
脳卒中になると自分の手足を自分のものと感じられなかったり、認知症になるとあたかも違う時代の違う場所にいるように振る舞ったり、いろんな症状が出てきますが
自己というのは脳内シミュレーションであり、こういった症状はシミュレーションがうまくできていないというふうに考えられないかなと思いました。
まだマトリックスという映画は見たことがないのですが、いずれ見てみたいと思います。
※一日一つ限定ですが、個人や非営利団体を対象に脳科学に関するご質問・調査を無料で行います。興味のある方はホームページの「お問い合わせ」ボタンからどうぞ。