フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

VSLM: 神経症状と損傷領域、ボクセル単位

今日取り上げる論文は、昨日の研究で使用された、脳の損傷部位と神経症状を比較検討する方法についてのものです。

この方法はvoxel-based lesion−symptom mapping (VLSM)というのですが、これは神経症状(神経学的検査から得られたスコア)と脳損傷部位の関連をボクセル単位(神経画像を構成する最小単位)で調べる方法だそうです。

従来の神経症状と脳損傷を比較する方法は大きく二つの方法に分けられるようです。

一つは「まず損傷部位ありき」の方法で、まず損傷部位を確定して、おなじ損傷部位を持っている患者とそれ以外のものを比較検討する方法なのですが、この方法の問題点として、この損傷部位がいくつかの下位領域から構成されていた場合、症状と関連しない下位領域の機能が無視されてしまうことや、あるいは該当領域以外の領域が症状に関連していた場合、この情報も無視されてしまうことが問題となるそうです。

もう一つは「まず症状ありき」の方法で、まず症状を確定して、おなじ症状を示す患者から共通する損傷部位を調べていく方法ですが、この方法だと神経症状が1点、2点、3点、4点・・・と段階づけられて評価されていた場合、どこかでカットオフ値を取るため、神経症状の「程度」の情報が切り捨てられるという問題があるそうです。

このvoxel-based lesion−symptom mapping (VLSM)という方法は、段階づけられた1点、2点、3点・・・という評価を、ボクセル単位で対応させて検討していくことで、上記の問題点を解決できる方法だそうです。

この方法で失語症患者を調べた結果、流暢性では島皮質が重要で、言語理解に関しては中側頭回が重要であるということが述べられています。

【要旨】

「一世紀以上にわたって、損傷部位と症状を対応させて調べる方によって多くの知見が得られてきた。しかし近年新たな画像解析方法が開発され、脳の損傷を脳の機能的ネットワークに関連付けて調べることが可能となった。このvoxel-based lesion−symptom mapping (VLSM:ボクセルを基底とした損傷部位と症状のマッピング)は損傷部位と神経症状をボクセル単位で調べるものである。今回このVSLMを使用して、失語症を呈した101名の左半球損傷患者を対象に言語理解と言語の流暢性が損傷部位とどのような関連を持つかについて調査した。結果、課題によって皮質の前部と後部で対照的な活動を示すことと、言語理解と言語の流暢性は相互作用を持つことが示された。」

参考URL:Voxel-based lesion-symptom mapping

遺伝子検査のジーンライフ<Genesis2.0>

コメント

本当はこの方法を批判的に吟味した論文を探していたのですが、うまく見つけきれなかったので、いちばん引用件数が多かったのを引っ張って来ました。

頑張って読み込んでは見たのですが、間違い等あるかもしれないので、なにかあれば教えていただければありがたいですm(_ _)m

この方法の是非はさておき、失行、失認、随意性の改善など、いろんな研究にこの方法が近年幅広く使われているのは、少し驚きました。

いろいろ調べる過程で、言語機能をネットワーク解析したものが見つかったので、次回取り上げたいと思います。よろしくお願いします。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします