フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

ブローカ野とウェルニッケ野、言語理解の関係

今日取り上げる論文は失語症の原因について調べたものです。

結論から述べると

① ブローカ野とウェルニッケ野は言語理解に直接的に関与していない。
② 言語理解に関わるのはこの二つの領域の周辺領域である。
③ ブローカ野とウェルニッケ野の活動はこれらの周辺領域の活動の結果でしかない。
④ 中前頭回が単語理解を行う上で中心的な役割を示す。
⑤ その他の周辺領域が文章の理解に関わる

というものです。

言語処理というのはどこかの領域が局在的に関わるという見方と全体として関わるという間の見方が良いのではないかということが述べられています。

失語症の症状というのは多彩なのですが、言語処理の様々な側面に対応する様々なハブ領域があり(局在的)、領域の損傷の組み合わせで(全体的)、様々な症状が現れるのではないかということが述べられています。

PT/OT/STの転職紹介なら【マイナビコメディカル】



【要旨】
「伝統的にブローカ野とウェルニッケ野が言語理解に関わる領域であると言われてきた。しかしながら言語処理プロセスは非常に複雑であり、この二つの領域以外に多くの領域が関与していることが報告されている。多くの失語症患者を対象にどの領域の損傷が言語理解能力と関連しているのかについて調査する機会があったため、これを報告する。研究では64名の慢性期の左半球損傷患者が11の下位検査からなるCurtiss-Yamada Comprehensive Language Evaluation - Receptive (CYCLE-R)を使用して検査された。8名の右半球損傷患者と15名の神経学的に問題のない高齢者を比較対象として検討が行われた。実験では被験者は音声で示された内容と一致するものを複数の選択肢から選ぶ課題を行わせられた。各被験者は神経学的画像によって特定された損傷部位とCYCLE-Rの結果とどのように関連しているかについて詳細に検討された。結果、5つの領域が言語理解と関連していることが明らかになった。その5つの領域とは中前頭回後部およびその下の白質線維、上側頭回前部、上側頭溝と角回、ブロードマン46野の前頭葉中部、および下前頭回のブロードマン47野であった。ブローカ野とウェルニッケ野の損傷は言語理解能力の低下と直接の関連が認められなかった。この結果を詳細に検討した結果、中前頭回が単語の理解に関わり、それ以外の領域が文の理解に関わっていることが考えられた。これらの結果は近年の言語理解に関する研究と一致するものであった。」

参考URL:Lesion analysis of the brain areas involved in language comprehension.

コメント

ブローカ野とウェルニッケ野が言語理解に直接関わっていないのは驚きでした。

言語聴覚士の連れ合いにドヤ顔で説明したらそんなのとうの昔に知っているよと言われて、ちょっとがっかりだったのですが。

言語理解に関わるのは、ブローカ野とウェルニッケ野の周辺領域で、ブローカ野とウェルニッケ野の活動はそれら周辺領域の結果にすぎないというのは

新幹線ネットワークに例えると、東京駅が機能しないのは、実は東京駅に繋がるハブステーションの横浜駅と大宮駅と仙台駅が壊滅してて、その結果として東京駅が動かない、みたいな感じなのかなと思いました。

また失語症の症状が多彩なのは言語操作に関わる様々な領域損傷の組み合わせの結果から失語症がなっているからではないかということなのですが

これはサッカーで言えば、フォワードやゴールキーパー、ディフェンダーなど、どのポジションの人がどう動けなくなると、チームの動き方が全体としてどう変わってくるのかというようなものなのかなあと思いました。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします