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ミラーニューロンシステムはロボットに感情移入できるか?

ヒトは感情移入が得意な生き物です。

映画で主人公がピンチに陥るとまるで自分のことのようにドギドキしてしまう。

飼い犬がクーンとうなだれていると我が身のことのように切なくなる。

まな板の上でまだ生きているアジがピチピチ逃げようとしていると、包丁を入れるのに躊躇する。

こういったように自分以外のあれこれについつい感情移入してしまう傾向がヒトにはあると思うですが、これは神経科学的にどういう解釈ができるのでしょうか。

ヒトの脳にはミラーニューロンシステムというものがあることが知られています。

このシステムはヒトのモノマネ能力(模倣能力)にも大いに関係してくるものなのですが、眼で見た動作をあたかも自分の動作のように取り込んでしまう、そういったシステムのようです。

こういったシステムがあるため、他人を見るとついつい自分のことのように感じてしまう、そういったことがあるようです。

今日取り上げる論文はこのミラーニューロンシステムがヒト以外の対象にも反応するかどうかについて調べたものです。

実験ではヒトの動作と、それに対応する工業用ロボットの動作を被験者に見せ、その時の脳活動を測定したものですが、やはりどちらの場合も同様にミラーニューロンシステムが賦活されたことが示されています。

ただしロボットの動作は繰り返し見せていると、このシステムは反応しなくなる傾向があったようです。

こういったことからミラーニューロンシステムはヒトの動作だけでなく、ロボットの動作に対しても反応すること、

またミラーニューロンシステムを駆動するには、動作の内容そのものよりも、その動作に何らかの目的性があるかどうかという点が重要ではないかということが述べられています。

【要約】
ヒトやサルを対象にした実験からミラーニューロンシステムは眼で見た動作を自分の動作として取り込む働きがあることが知られている。今回、このミラーニューロンシステムがロボットの動作に対しても反応するかについて研究を行った。実験ではまず手の動作に反応する脳の領域を同定して、ロボットとヒトの手を使った動作を見せ、その時の脳活動について調べた。結果、ミラーニューロンシステムが賦活されたが、これはロボットの動作を見せた時とヒトの動作を見せた時とで大きな違いは見られなかった。しかしながらロボットが繰り返し同じ動作を行っている様子を見せた時にはこのミラーニューロンシステムは賦活されなかった。これらの結果からミラーニューロンシステムはヒトの動作だけでなくロボットの動作に対しても反応することが示され、このシステムは従来考えられていた時よりより広範囲を者を対象に活動することが考えられた。さらにこのシステムを賦活するためには動作の仕方そのものよりも動作に目的があるかどうかという点が重要であることが考えられた。

参考URL:The anthropomorphic brain: the mirror neuron system responds to human and robotic actions.

コメント

私の家にはまだ無いけれど、お掃除ロボットを持っている人に言わせると、あの円盤型の何かについつい感情移入してしまうものらしい。

一生懸命走っていたり、充電器のところに戻る様子を見ると(ご飯を食べに行ったとかいっている)愛らしさが湧いてくるらしいけど

この論文に書いているように愛着というか感情移入が湧いてくるためには動作そのものよりも、動作に目的があるかどうかというところが大事なのかなと思いました。

これとは話が少しずれるけど

繰り返しの機械的な動作にミラーニューロンシステムが反応しないということは

裏を返せば、ヒトらしさというのは再現性のなさの中にあるのかなと思ったり、

一回性というが偶然性というか、ゆらぎというか、うまく言葉には落ちないんだけど、そういったものの中にヒトらしさがあるんだろうか。

そう考えると再現性を至上価値とする科学の手法はヒトらしさを知るためには果たして妥当なのかなと思ったりします。

 

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