
扁桃体と下側頭葉の関係とは?
「顔色をうかがう」という言葉があります。
相手が怒っているのか、機嫌がいいのか、その表情から推し計る。
こういった能力の背景には扁桃体が関係しているようです。
ヒトの脳には顔の認識に特化した領域があって、これは下側頭葉にあるようです。(図は内側面から見たもの)
扁桃体というのはいろいろな領域とつながっているのですが、この下側頭葉とも繋がる形で表情認知に関わっているようです。
扁桃体と下側頭葉がつながって表情認知に関わっているところまでは分かったのですが、それをもう一つ推し進めて、具体的にどうつながっているかについて調べたのが今日の論文です。
扁桃体というのは一塊の領域というわけではなく、いろんな神経核の集合体のようです。
これを大きく分けると
基底外側群と中内側群に分けることができて
基底外側群は視覚領域全般に広く投射し、
中内側群は皮質下領域に投射する傾向があるそうです。
概念図で示すと多分こんな感じで
感覚
↓
扁桃体(基底外側群/中内側群)
↓ ↓
視覚領域 皮質下領域
こんなふうに同じ扁桃体でもフィードバックのかかり具合は場所によって大分異なっているようです。
下側頭葉というのは腹側視覚経路の下流にあたるところですが
この扁桃体基底外側群からフィードバックがかかって、情動的な表情の認知の処理がなされるようです。
今日取り上げる論文ではサルの扁桃体を人工的に損傷して実験したものですが、扁桃体を損傷すると顔色が読めなくなるというのは、扁桃体の中でも基底外側群の損傷によるものではないかということが述べられています。
【要旨】
「以前マカクザルを対象に行った研究により、表情刺激の提示によって扁桃体と下側頭葉の活動が調整されること、また感情的な表情を提示することでより大きな変化が見られることが示され、私たちはこのような効果を「特性効果」と名付けた。扁桃体の損傷によって、扁桃体から下側頭葉へのフィードバック機能が減弱することでこの特性効果が減弱するのではないかという仮説のもとに今回実験を行った。実験では人工的に扁桃体の機能損傷を引き起こしたサル3頭と損傷を加えていないサル3頭を対象に行い、様々な表情を提示し、扁桃体と下側頭葉の活動を機能的MRIを使用して測定した。結果、扁桃体の損傷は顔情報の処理には変化が見られなかったが、情動的な表情の処理には機能低下が示された。また扁桃体前部が損傷されていなければ下側頭葉前部の機能低下が見られず、反対に扁桃体後部が損傷されていなければ下側頭葉後部の機能低下が見られなかった。これらのことから扁桃体から下側頭葉へのフィードバック投射によって特性効果が調整されること、さらにこの扁桃体から下側頭葉へのフィードバックは前部から後部にかけて段階的に異なっていることが考えられた。」
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コメント
顔色よんだり空気読んだりするのにきっと扁桃体が関わっていると思うのですが
生きていくためにはきっと空気をあえて読まない能力、無視する能力が必要な場面もあるんじゃないかなと思います。
肚を決めるというか、そんな高次の認知能力がきっとヒトにはあって
慌ただしい扁桃体の働きをグッと抑えるというか、そんなものがヒトの脳にはモジュールとしてあるような気がするのですが
この「肚」というのは神経科学的にどんなものなのかなあなどと考えたりしました。
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