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前頭前野腹内側部はいかにして情動をコントロールしているのか?

中学校では剣道部でした。

廊下で部活の先輩に会った時には時には立ち止まって深くお辞儀をしなければいけないという文化(ルール)がありました。

うっかり忘れようものなら、ぎろりと睨まれるし、放課後の練習が怖い。

なので、友だちとぺちゃくちゃ話しながら歩いていても視界に先輩が入るやいなや視線はそっちにロックイン、眼にドーンと入ってきたのを覚えています。

先輩でなくても、ヘビでも蜘蛛でも上司でもなんでもいいのですが、潜在的に自分に危害を与えうる対象が視界に入ると、眼球はオートマティックにそっちの方を向き、バンっと視界にロックインされる。

なぜこういうことが起こるのでしょうか。

このようなことが起こるのは例によって扁桃体の働きなのですが、

危険情報→視覚領域⇆扁桃体

で直接視覚野にフィードバックがかかって視覚領域の活動が増大する。

またそれだけでなく

   →→皮質下領域→
  ↑        ↓
危険情報→視覚領域⇆扁桃体⇆前頭前野
       ↑       ↓
        ←←←←←←←

というふうに前頭前野を経由した間接的なフィードバックもある。

今日取り上げる論文はこの前頭前野経由のトップダウン的な処理について調べたものです。

前頭前野といってもいろんな領域の集合なのですが、この前頭前野のどのへんがこのトップダウン処理に関わるのでしょうか。

実験を行なって調べてみると、前頭前野腹内側部といわれる部分が関わっているようです。

この領域は図で見てもらえばわかりやすいと思うのですが

で、情動に関わる前部帯状皮質と前頭眼窩野の部分が、この前頭前野内腹側部にあたる部分なのですが、扁桃体からの連絡を密に受けて、ここが視覚野にフィードバックをかけているのではないかということが述べられています。

【要旨】

「危険に際して大脳皮質の自動的な反応が引き起こされるが、このような反応は進化的に構成されたものである。本研究はこの大脳皮質の自動的な反応について調査を行った。被験者は蜘蛛に対して恐怖感情を抱く31名である。実験では中央に数字が書かれた画面を提示し、その数字を判別させる課題を行った。数字が書かれた画面の周縁には、不快刺激(蜘蛛)と非不快刺激(蝶および雪の結晶)をはっきりとは見えないように提示し、この課題を行っている時の脳活動を調べた。結果、刺激提示後から150㍉秒前後に前頭前野腹内側部に不快刺激と関連して活動の増加が認められた。続いて刺激提示後500ミリ秒前後に帯状皮質後部と視覚連合領域の活動増大が認められた。これらの結果から前頭前野腹内側部は注意のトップダウン処理に働いて(視覚処理に働く脳の後部領域の活動を調整する)、危険に対する反応を自動調整していることが考えられた。」

参考URL:Cortical response to subjectively unconscious danger.

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コメント

いろんな事情があってお酒をやめて久しいが

お酒を飲むと先輩でもなんでも怖くなくなるのは、きっと前頭眼窩野かどっかがダウンしてしまうからだったのだろうか。

酒を呑むという行為は恐怖のくびきから逃れるという行為で

扁桃体システムからの束の間の逃避なのだろうけれども

酒なしで恐怖とうまく付き合えるようになった今のほうが少し幸せかなとも思います。

 

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