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ボンヤリした情報はなぜ怖いのか?

「ほのめかす」あるい「ちらつかせる」という行為があります。

何かをはっきり提示されるよりも、こっちのほうが心がグラグラしてしまう。これはどういうわけでしょう。

心霊写真なんかを思い出しても、写真の周囲にうすらぼんやりとボヤ~と現れている方が、写真中央で明瞭にバーンと出ているよりも格段に怖い。

こう考えると、うすらぼんやり系の情報というのはヒトの恐怖システムを駆動するように思えるのですが、視覚においては、これはどういう仕組になっているのでしょうか。

ヒトの視覚システムというのは、実は二本立てになっていているそうです。

これは

「うすらぼんやり系」の情報を処理するシステムと

「明瞭はっきり系」の情報を処理するシステム、

この二本立てになっているようです。

前者のうすらぼんやり系の情報はざっくり言えば、視野周縁の情報なのではないかと思います。

ふつう何かを見ている時、視野の中央ははっきりと見えているけど、その周囲というのは相当ぼんやりしている。

これはあくまでたとえですが、視野中央の解像度を最新のデジカメとするならば、視野周囲の解像度というのは昔のファミコン程度の解像度しかないのではないかと思います。

視野中央と視野周縁ではこれくらい差があって、それぞれ違うシステムが情報処理に関わっているようです。

そして「明瞭はっきり系」の情報は「カタチ」情報の処理に絡んでいき

また「うすらぼんやり系」の情報は「動き」情報の処理に関係していくそうです。

つまり「はっきり」と「ぼんやり」では違う情報処理の経路をたどる、

いいかえれば視野中央の情報と視野周縁の情報というのは異なる情報処理の経路をたどる

こういうことになるのだと思います。

動き情報の処理に関わる「ぼんやり」情報というのは、必ずしも視覚野を抜けていかない。

視覚野を通らず、皮質下領域を抜けて視覚野をショートカットし、迅速に脳に情報を伝える、そんな仕組みになっているそうです。

今日取り上げる論文は、視野周縁に提示された危険情報はどういうふうに処理されるかについて調べたものです。

それによると視野周縁に提示された危険情報というのは、やはり視野中央に提示された危険情報と違うルートで処理されることが示されています。

具体的に言うと、視野中央に提示された情報は視覚野→側頭葉という意味認識に関わるオーソドックスなルートをたどるのに対し

視野周縁に提示された情報というのは視覚野を通らず右側頭葉内側(扁桃体)→前頭葉というふうに、迅速に情報が提示されることが示されています。

野生の環境を考えても、ライオンのような捕食者というのは、普通は視野の周縁からやってくる、そのために視野周縁の情報というのは迅速に処理されるような仕組みになっているのではないかということが述べられています。

【要旨】

【背景】自然環境においては脅威は主に視野周縁から訪れる。視野周縁に現れるこのような危険情報は即座に視野周縁への注意を高め、状況に即座に対応する準備を整えることになる。こういったことから視野周縁に現れた危険信号は迅速かつ非意識的に注意システムを駆動するという仮説が考えられる。

【方法/結果】今回脳磁図を使用して、視野の提示場所による神経活動の変化について分析を行った。実験では恐怖表情と中立表情が視野の中心と視野の周縁の両方に短時間提示された。脳活動の変化は80-130㍉秒、140-190㍉秒、210-260㍉秒の時間枠で計測された。視野周縁部に恐怖表情が提示された場合、刺激提示後80㍉秒において前頭葉と扁桃体を含む右側頭葉内側部に活動の増加が見られた。視野中央部に恐怖表情が提示された場合、後頭葉から側頭葉に至る古典的なパターンが140-190㍉秒で認められた。

【結論】今回の研究から視野周縁に提示された危険情報は迅速かつ非意識的に側頭葉内側と前頭葉の活動を引きおこすことが示された。視野中央部に提示された危険情報が従来示されてきた後頭葉-側頭葉経由の活動を引きおこすのに対し、視野周縁に提示された危険情報は皮質下領域を経由して、より迅速かつ効率的、自動的な反応を引きおこすことが考えられた。」

参考URL:Unconsciously perceived fear in peripheral vision alerts the limbic system: a MEG study.




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コメント

なにか心にやましいところがあると

勘が鋭いというのか、女の人というのはたちどころに何かを悟ってしまうような傾向があるのではないかと思います。

これはなぜかと考えてみたのですが

ぼんやりした情報というのはかえって扁桃体システムを強く駆動するからではないか

特に右扁桃体がそういったぼんやり情報の処理に関わるのであれば、右脳優位と俗説に言われている女性のほうが強く扁桃体が駆動されるのではないか、そんなことを考えました。

いつものように根拠ないのですが(T_T)

隠そうとすればするほど、往々にして他者の扁桃体システムが強く駆動する

だったら馬鹿と言われようとも他者の信頼を勝ち取るには、正直がいちばんなのかなと思ったりもします。

腹を割る、腹を見せるなんて言葉もあるし

まあ、うまく世の中渡って行きたいものです(T_T)

 

 

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