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ヒトとチンパンジーの違いはなにか?

ヒトの能力というのはどこまで先天的で、どこまで後天的なものなのでしょうか。

この私の能力は生まれつき決まっていた宿命的なものなのか、それとも親の教育や環境によって作られた改変可能なものなのか、

これはなかなか決着が付きなさそうなテーマだと思います。

ただ所得が高いほど子供のIQが高くなったり、あるいはヒトに構われて育ったチンパンジーは道具を上手に使いこなせるようになるだとか、環境によって決まってくる要素もいろいろあるようです。

今日取り上げる論文は、認知発達には環境の影響が大きく、そのためヒトの認知能力も環境の数と同じくらい多様であり、チンパンジーも飼育されたものと野生のものではだいぶ違うということ、

またヒトの認知特性(他者の心の理解など)を知るために行われたチンパンジーとの比較研究は主に白人中産階級の個体と飼育されたチンパンジーを比べた限定的なもので、この方法ではヒトの何たるかを示すことが出来ないこと、

そのためヒトの認知特性を知るためには、多様なものと多様なものを比べられるような方法論の確立が大事ではないかということが述べられています。

【要旨】
「ヒトの認知能力を探求するにあたり二つの理論的アプローチがある。一つは発達学的アプローチで、これは能力の獲得にあたって環境や社会の役割を重要視するものである。さらにもう一つのアプローチはヒトの能力は生得的に定められていると考えるもので、これは実験心理学や比較心理学の分野で支配的なものである。このような二つのアプローチがあるが、結果的には白人中産階級のヒト科と飼育されたチンパンジーの二種類を比較した結果からヒトの認知能力の特異性が説明されることとなっている。しかしながらヒト科は白人中産階級以外にも様々な層があり、またチンパンジーも飼育されたものばかりではない。ヒトとチンパンジーの認知の力を比較した研究では、環境や社会の影響を重要視する発達学敵アプローチの優位性が示されている。さらにヒトとチンパンジーを比べるにあたり実験方法の偏りがあり、このことも二種間の比較の信憑性を低める要因となっている。種の間の認知能力の違いを明らかにするためには、まず同じ種の中での違いを明らかにし、実験方法も偏りのないものにする必要があると考える。そのためには実験心理学や比較心理学を基盤とする理論的アプローチに何らかの変更が加えられる必要があると考える。」

参考URL:What makes us human (Homo sapiens)? The challenge of cognitive cross-species comparison.



コメント

ヒトの性質が生まれつき決まっているのなら子育てなんてする必要ないわけで

子育てというものが存在するということは、やっぱり教育の影響が大きいんだろうなと思う。

不必要なものであれば、人類の歴史の中で消滅しているはずだし、残っているということは必要である可能性が高い

どこまで生まれでどこから育ちかは分からないけど、能力の可変性の大きさがヒトの特異性かなと思ったりもします。

バッタは教育してもバッタだし、猫もしつけても猫的なところから大きくは変わらない。

どこかで聞いた言葉だけど、人は生まれつき人ではなく、後天的に人になる生き物なのかなと思います。

 

 

 

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