フォローする
【脳科学専門ネット図書館】会員募集〜ワンコインで世界中の脳科学文献を日本語要約〜

シーソーゲームとココロの関係

私達の脳というのは絶えず考えたり感じたり動いたりして止むことがありませんが、こういった活動はどのようにして制御されているのでしょうか。

これを説明する一つの考え方に中央実行系というものがあります。

これは脳の中の特定の特定のシステムが注意や運動を始めとする様々な脳の活動を制御しているというものです。

つまり脳の中に小人がいて「ウゴケ」「アルケ」「カンドウシロ」「ソコへチュウイシロ」などあれこれ指示を出しているのではないかという考え方ですが、これは必然的に「じゃあ、この小人を動かしているのはどこ?」という疑問へもつながりますし、小人の中の小人の中の小人・・・というふうに無限後退を起こしてしまい、論理的にうまく成り立たないこともあるのではないかと思います。

今日取り上げる論文はデフォルトモードネットワークに関するものです。

デフォルトモードネットワークというのは何もしていない時の脳の活動を示すネットワークですが、実際は何もしていないというわけではなく、自分の体の内外の情報にアンテナを立てまくって、それ相当に忙しく活動しているそういった領域のようです。

この実験ではある課題を行っている時と休んでいる時の脳の活動を調べたのですが、休んでいる時の脳の領域(デフォルトモードネットワーク)と課題を行っている時の脳の領域というのはシーソーゲームのように逆相関の関係になっていることが示されています。

つまりどちらかの活動が高くなれば自動的に片方の活動が低くなり、その逆もしかりという状態になっているということです。

海辺の波の満引きのように、片方が上がれば片方が下がり、片方が下がれば片方が上がる、そういった関係になっていることが示されており、こういった脳の中の関係性を考えると中央実行系、いわば脳の中の小人を想定する必要はないのではないかということが述べられています。

【要旨】
「注意を必要とする認知課題を行っているときには、脳のある領域の活動がたまかるのに対して、ある領域の活動は低下することが知られている。今回認知課題を行っている時の脳活動を機能的MRIを使用して調べた。結果、安静時に高い活動が見られた領域は認知課題時、活動の低下が見られ、認知活動で高まる領域とは負の相関関係を示していることが分かった。」

参考URL:The human brain is intrinsically organized into dynamic, anticorrelated functional networks.

コメント

小説や漫画の作者に言わせると、物語が勝手に走り出す、あるいは登場人物が勝手に走り出すという現象があるらしい。

あるロケーションにそれぞれのキャラクターをもった人物をそれなりに配置すると、あとはそのキャラクターの相互作用によって自動的に物語が走りだす、そういった現象のようだけど、つまり作者がいなくても物語が進んでいく

脳というのもいろんな領域の相互作用で自動的にいろんな活動が惹起するわけで、中央実行系のような脳の中の小人がいなくてもよい、そんな話なのかなと思いました。

 

 

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします