
「瞬間的な注意の逸脱の神経基盤」
医療現場ではよくきく言葉にヒヤリハットというものがあります。
ちょっと目を離した隙に患者さんが転びそうになった、
あるいは夜勤明けでボンヤリしていて患者さんに違う薬を飲ませそうになったというようなものなのですが、こういった医療事故寸前の事態をヒヤリハットという言葉で呼んでいます。
何も医療現場でなくても車を運転をしている時も何かの拍子にヒヤリとする瞬間があると思うのですが、こういった時、つまり注意が一瞬飛んでしまう時、脳はどんなふうに働いているのでしょうか。
今日取り上げる論文は注意が一瞬それてしまう時の脳活動について調べたものです。
脳の中には大きく分けて二つのシステムがあるそうです。
一つは仕事システムというようなもので、何か集中して仕事をしている時にカッカと活動するようなシステムです。これはタスクポジティブネットワークという名前で呼ばれていて、名前の通りタスク(仕事)でポジティブに働きます。
もう一つのシステムはボンヤリシステムというようなもので、これはボンヤリしている時ほどよく働いて、仕事が立て込んでくると働くなくなるようなシステムです。これはタスクネガティブネットワークという名前で呼ばれていて、名前の通りタスク(仕事)に対してネガティブに働くようなシステムです。
この仕事システムとボンヤリシステムはシーソーゲームのように働いていて、どっちかの活動が上がるとどっちかの活動が下がるような関係になっています。
今日取り上げる論文では注意が一瞬それてしまうような時には瞬間的にボンヤリシステムが強くなって仕事システムが弱くなることが示されています。
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【要旨】
何かをしようとしていて注意が一瞬それてしまうことがある。このようなことは時に深刻な事態をもたらすことがあるが、この注意の瞬間的な逸脱に関わる神経活動について調べた研究は少ない。本研究では注意が逸脱に関わる神経メカニズムについて調査を行った。結果、注意の逸脱に先立って注意のコントロールに関わる前帯状皮質と右前頭前野の活動が低下することが示された。さらに本来注意によって活動が低下するデフォルトモードネットワークの活動低下幅が小さくなっていることが示された。また注意に逸脱に関連する神経活動の流れとしては、まずデフォルトモードネットワークの活動低下の減少が起こり、外的刺激の感覚処理に関わる領域の活動低下が起こり、さらに前頭及び頭頂部の広範な活動増加が見られることが示された。また刺激が適切に処理された時は右下前頭回と右頭頂側頭接合部の活動が高いことが示された。これらの結果から瞬間的な注意の逸脱に関わる一連の神経活動があることが示された。
参考URL:The neural bases of momentary lapses in attention.
コメント
今、1歳8ヶ月の息子がいるのだけれども
ご飯を食べていてもお腹が膨れてくると途中でご飯遊びをしてしまう。遊ばないできちんと食べなさいと言ってみるけれど、ちょっとするとまた遊んでいたりして
これはタスクポジティブが働きにくくてタスクネガティブになりやすいのだななどと思ったり
あるいはお腹が減っている時というのは一心不乱に食べていて、こんな時はタスクポジティブがよく働いていると思うのですが
つまりはタスクポジティブがよく働くためには欲望、欲求というものが大事なのかなと思いました。
ハングリーで行こうヽ(´エ`)ノ