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やる気と脳波、アドレナリン

よく聞くことばに「やる気があればなんでもできる」という黒魔術的なものがありますが、これは百歩引いて考えても、まあたしかに「やる気」というのは人の能力をヒートアップする可能性はあると思います。

しかしながらこの「やる気」というのは脳のどの辺がどうなれば出てくるものなのでしょうか。

今日取り上げる論文は脳波と「やる気」の関係について詳しく述べたものです。

脳波というのはその名前の通り波の形で表わされる脳活動なのですが、いろんな認知活動に伴う特有の波というのがあります。

その中でも認知や意思決定と関連する波形があり、これは刺激提示後から300~400ミリ秒後に見られる上向きのPositiveな波であることからP300と呼ばれています。

このP300というのは認知や意思決定と関係して立ち上がるというのは分かっていたのですが、では具体的に脳のどういった活動を反映しているのかというのは今ひとつはっきり分かっていなかったそうです。

脳というのは電気と脳内ホルモン(神経伝達物質)の二本立てで情報が受け渡されていくような仕組みになっているのですが、脳の中には「やる気」に関わる脳内ホルモンを調整するネットワークがあるそうです。

認知や意思決定と関わるP300と呼ばれる要素はこの脳内「やる気」ネットワークの活動を反映したものであろうということが述べられています。

 

ポイント

事象関連電位の一つであるP3とよばれる要素は長い間心理学者や神経科学者の注意を引いてきた。本稿はこのP3の情報伝達における役割についての神経学的な知見をまとめたものである。

私達の意見ではこのP3要素は青斑核-ノルアドレナリンの活動を反映したものであると考える。

青斑核-ノルアドレナリンシステムによって意思決定に関わる脳活動が促されるが、P3はこの意思決定に関わる神経活動を反映したものであると思われる。

参考URL:
Decision making, the P3, and the locus coeruleus-norepinephrine system.

補足コメント

脳の中には青斑核と呼ばれる部位があり、これはノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質を放出するところだそうです。

このノルアドレナリンは添付の図のように脳の広範な領域に巡ってその神経活動を高めることが知られているのですが

海馬や前頭前野、側頭頭頂接合部といった認知、意思決定に関わる領域に枝をめぐらしており、

ノルアドレナリンの放出で一過性にこれらの領域の神経伝達をヒートアップすることができるそうで、これがいわゆるP300 という波形になって現れるのではないかということです。

本や講習会などはお金と労力をかけて勉強すると学習効率が上がるというような話を聞きますが、

これもテンションが上がることで青斑核-ノルアドレナリン系の活動がヒートアップして認知に関わる脳活動が過熱するためなのかと考えたり

締め切りやご褒美があると仕事がはかどるというのもそのへんなのかなと思いました。

あるいは鬱々していると頭の働きが悪いというのもこれかなと思ったり

いずれにしても「やる気」を出すためには、よく寝て、しっかり食べて、しっかり休んで、然るべき神経伝達物質を出しやすいような下準備が大事なんだろうなと思いました。

 

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